面白いのか?と問われれば、「いえ、それほどでも」。
ストーリーに新味が無い上に、設定にも無理があります。ただ、色々引っかかる所がある(←とても大事)ので、どうにも捨て置けません。
「東京ギャング対香港ギャング」(1964年/石井輝男監督)
前半の舞台は香港。ヤクの買い付けに来た高倉健が卸元を乗り換えた事で命を狙われます。
63年の香港と言えば、恐らくまだ“ハンの要塞島”も出来ていない頃。当時の様子が分かるだけでも貴重な映像資料です。
被弾して腹から血を流していても「息があるうちにやる事はやっておかないと」と自分の仕事を完遂させようとする健さんはジャパニーズ・ビジネスマンの鑑。
遂に道の真ん中で力尽きますが、このときのカメラが超ロングショット。通行人のリアクションがリアルです。
公道超望遠ゲリラ撮影の頂点は小沼勝監督の「奴隷契約書」だと思いますが、香港でやっている所が高ポイント。
ここで“第一部完”。後半は健さんが運び屋に渡した1億円分のヤクを巡る攻防戦。
一応主役って事になっている鶴田浩二がようやっと顔を出すのですが、見事なくらい精彩がありません。
戦争体験を愚痴っぽく語り(←これは鶴田浩二のトレードマークですが)、挙句の果てに売り物に手を出してヤク中に。
禁断症状に悶え苦しむ鶴田をアクロバット・ダンサーの踊りを交えながら延々映すカットは「女体渦巻島」の“きらきらダンス”に匹敵する不可解さです。
見せ場らしい見せ場も無い鶴田を尻目に、出てきた瞬間から場面をさらう丹波哲郎の独り勝ち。
役者比重を無視した石井ワールドに浸りましょう。
★ご参考