まずは上のポスターをご覧ください。
宣伝素材なので劇中の出で立ちとは若干異なりますが(本編モノクロだし)、褌・刺青・日本刀、帯の代わりに手榴弾(実際にはダイナマイト)…正に男の晴れ姿。
男、健さん、ここにあり。
「いれずみ突撃隊」(1964年/石井輝男監督)
どこに行っても問題児なヤクザ一等兵・衆木(もろき)武男(高倉健)。
内地で持て余された衆木は転属(今風に言えば“報復人事”)に転属を重ねて遂に支那の最前線へ。
ひとり、馬をかっ飛ばして着任。その日のうちに上官と揉め、仁義を切って営倉入り。
とりなそうとしてくれた安川中尉(杉浦直樹)にも牙を剥く衆木でしたが、タイマン張られてボッコボコ。
尚も強がりますが、安川が同郷(浅草)の地回りやくざ、関東武蔵一家の三代目と知るや、「あ、兄貴、盃を!」
この軽さがこの頃の健さんの魅力です。
にしても頭がバーコードになる前の杉浦直樹はかっちょいいですね。そりゃ健さんも惚れちゃいますわ。
見せ場は色々ありますが、わたし的チェックポイントはクライマックスに健さんが八路軍掃討のため撃ち続ける九二式重機関銃。
1930年代前期に開発され、大東亜戦争全期間を通じて使用された大日本帝国陸軍の重機関銃です(設計は南部麒次郎、製造は日立兵器)。
機関銃と言うとベルト状に連なった弾丸を思い浮かべますが、九二式は保弾板という文字通り板状のカートリッジを差し込んで給弾します。
1枚の板に30発の弾が乗っているので連射限界は30発。装填を頻繁に行う(短時間ながら小休止が入る)ため銃身が過熱し難いという副次的利点があります。
それでも劇中では過熱してましたが(健さんは男らしい冷却方法でこれを解決)。
給弾と排莢がリアルだったので実銃かしらとも思いましたが、そういう訳ではないようです。
クレジット上のメインヒロインは浅丘雪路ですが、美味しい所を全部持っていく実質ヒロインは三原葉子。
健さんとのロマンスこそありませんが、慰安婦の中では唯一背景設定がなされ、駅馬車なアクションもこなして、最後は九二式の給弾まで手伝う八面六臂の大活躍。
左は本家「駅馬車」
監督の好みが全面に出た超えこひいき演出です(笑)。
男の花道を飾るラストシーンでは、主題歌が勝手に「戦士の休息」(♪男は誰も皆~)に脳内変換されました(この時の健さんは“無口な”兵士ではありませんでしたが)。