娘の命を奪った一丁の銃(357マグナム)。
その製造から流通経路、犯罪履歴を丹念に辿り、最後の所有者を目指すひとりの老人。
燻し銀ジェームズ・コバーンの遺作は渋いにも程がある男の履歴書でした。
「アメリカン・ガン」
(2002年/アラン・ジェイコブズ監督)
何故、コバーンがこの銃の記憶を辿るのか。最後に明かされる事実を踏まえてもう一度見直すと「なるほど」と思わせるカットが多数あり、構成の妙に唸らされます。
もうひとつ、味わい深いのは銃の来歴にコバーンの(役柄としての)人生を重ねている所。
子供の時に初めて手にした拳銃(SAAのルーズベルトモデル)、軍に入隊する時に偶然出合った(後の)妻、初めて撃った軍用ライフル、そして、一瞬の躊躇から戦友を死なせてしまった戦場のトラウマ・・。
この西部劇→戦争映画という流れがコバーンとシンクロして一層の重厚感を醸し出しています。
明らかに体調不良なコバーンの健康状態も緊張感を高めるのに一役。
あまりの渋さに劇場未公開となりましたが、遺作と呼ぶに相応しい作品だと思います。
銃の話ついでで以下、余談。
昨日のニュースに「神奈川県のキャバクラの経営者が、機関銃(イングラムM10)不法所持で逮捕」ってのがありましたが、イングラムは機関銃じゃないぞ。
機関銃ってのは、通常は二脚で地面に据えて、フルサイズのライフル弾をベルトリンクで支給する連続発射銃の事。
「プレデター」に出てきたガトリング銃(字幕では無痛ガン)は力自慢の兵士なら持ち運び可な代物ですが、あれは実用以前の映画的ギミック。
イングラムは「ニューヨーク1997」でスネーク・プリスキンが使っていた奴で、拳銃弾を連続発射する、一般的にはサブマシンガン、場合によってはマシンピストルにカテゴライズされる代物。
ついでに言えば「暗黒街の顔役」「血まみれギャングママ」等のギャング映画に出てくるのはトミーガン(ドラム・マシンガン)、戦争映画や「スカーフェイス」でお馴染みのM16はアサルトライフルでどれも厳密には機関銃とは別呼称。
そりゃまあ、一般人にとっては連射できるものは全部まとめて機関銃かもしれませんが・・。
※参考:「スカーフェイス」→2008年1月18日
「男汁博覧会。 プレデター1&2」→2008年6月10日
「ニューヨーク1997」→2008年8月10日
「暗黒街の顔役」→2010年1月26日
「血まみれギャングママ」→2010年12月5日