デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

命名:騙し絵ホラー。 メサイア・オブ・デッド

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ゾンビ映画にありがち(と言うより一種のお約束になっている)ゴアシーン一切無し、にもかかわらず、全体を嫌ぁな雰囲気が霧のように包み込んでいます。

気配、佇まい、空気・・。

アメリカ映画ですが、手触りは完全にヨーロッパです。

メサイア・オブ・デッド」

(1973年/ウィラード・ハイク&グロリア・カッツ監督)


海沿いの田舎町ポイント・デューン。ここで消息を絶った画家の父を探してアトリエを訪れた娘オーレッティ。

ロメロの「ゾンビ」以前にスーパーに屯するゾンビを登場させた食肉売り場一番乗り映画だそうですが、んなこたぁどーでもいい(細かい事を言わせてもらえれば、「ゾンビ」の舞台はショッピング・センターであってスーパーではない)。

注目すべきは父のアトリエ。

内部の壁一面に騙し絵(トリック・アート)が描かれており、平面が全て立体に見えるという凝った細工がしてあります。

パースの狂ったセットで観客の眼を混乱させた「カリガリ博士」のようです。

オチも含めて、作品全体が一種の騙し絵ともとれる構成は、カリガリの末裔を思わせます。

行方不明者を探しに来たら町全体が・・というプロットは「死霊の町」。で、町自体の雰囲気は「恐怖の足跡」。見事なパッチワークです。

物真似的な印象が全く無いのは、監督の技量の賜物でしょう。

窓越しに叫ぶ女のシルエットとかはアルジェントあたりに影響を与えているような気がします。

DVDとは思えない画質と狂ったアスペクト比(不自然に左右に引っ張られて人が皆デブっている)も、本作の嫌々感を強調する要因ではありますが、できれば高画質・正画角で再見したい作品です(誰かまともなDVD出して・・)。

※参考:「恐怖の足跡」→2008年12月15日
    「死霊の町」→2009年1月6日