切な過ぎてちょい鬱時は鑑賞厳禁。 顔のない眼
フレンチ・スプラッターの始祖と言われる作品ですが、怖い以上に哀しく切なく。
“特に理由はないけど、ちょっと気分が塞ぎ気味で”なんていう軽鬱時には観ない方がいいかもしれません。
「顔のない眼」(1959年/ジョルジュ・フランジュ監督)
パリで発生した連続美女失踪事件。川から発見された死体には顔の皮膚がありませんでした。
犯人は近郊で病院を経営する医師。交通事故で顔面に大怪我を負った愛娘のために、似たような背格好の女をさらってきては、顔面移植手術をしていたのでした。
娘が顔を隠す為にしている真っ白いマスクがエライこと不気味。そして哀れ。
顔をなくした女と顔を奪われる女。他人の皮膚はなかなか定着せず、やがて壊死し崩れ始める・・。
楳図かずおの世界です。モノクロの暗く沈んだ耽美な画面が鬱々感をこれでもかと上塗り。
実行犯(女の拉致&手術助手&死体遺棄)はアリダ・ヴァリ。流石、サスペリア・バレエ学校教官。手際の良い仕事ぶり。
手術(顔面剥ぎ取り)シーンを克明に描写しているのには驚きました。
地獄の御伽噺のような静謐さに溢れた名作だとは思いますが、下手にシンクロしそうな神経の持ち主は観るタイミングを考えた方がいいでしょう。