「未来は過去と同じくらい支離滅裂だ」
いやあ、困った。何せ相手はマケドニアの狂人監督。下手な芸術作品より手ごわいぞ。
ビデオ・ジャケットには「スターウォーズと時計仕掛けのオレンジとマッドマックスをミックスし、フェリーニとブニュエルのシュールレアリズムがブレンドされた映画だ!」という“スウェーデン・シネマ誌”のコメントが掲載されていますが、思いついたもの並べりゃ良いってもんじゃねえだろ。
本作はズバリ、「エル・トポ」+「くりいむレモン」だ。
※人間、訳の分からないものに出くわすと、既存の何かに例えようとします。この映画を観た人のほんとんどが、判で押したように“この映画はこれ+これ”みたいな物言いをしています。本作が如何に訳分からないかの証明でしょう(笑)。
「グッバイ20世紀」
(1999年/アレクサンドル・ポポフスキ監督)
マケドニア映画ですが、世界地図でマケドニア(共和国)の位置を指し示す事が出きる人が果たしてどれくらいいるでしょうか。
Wikipediaによれば、“憲法上の正式名称はマケドニア共和国であり、約125ヶ国はこの呼称を用いている一方、欧州連合や日本等はこれを認めず、国際連合に加盟したときの暫定呼称マケドニア旧ユーゴスラビア共和国を使用している”んだそうです。
国の名称ひとつでこれだけ揉めているんです。細かい所ではそこかしこがとんでもなく揉めているに違いありません。
しかし、そういった背景は知る術がない(と言うよりレビューの為にそこまで調べていられない)ので、見たまんまお伝えします。
舞台は3つ。2019年の近未来マケドニアといつから数えてかは分かりませんが100年前のマケドニアと20世紀最後の日(何故か1999年12月31日)のマケドニア。
とある罪を犯してしまったがために死ぬ事を許されない男、妹を父親から買い取り結婚と同時に銃殺される男のニュース・フィルム、そして新世紀を通夜で迎える人たちの乱痴気騒ぎ…。
脈絡が無いような、あるような、やっぱり無いような…。
ジャケットにあるような「皆殺しサンタ」は出てきません(皆に殺されるサンタは出てきます)。
シド・ビシャスの「マイ・ウェイ」を聴きながら、コカインがけ菓子喰らってラリパッパになった連中がサンタ殺して大騒ぎ…。
もう最初からカルト狙いで撮ったとしか思えない奇天烈さ…の割には構図とライティングが絶妙で画作りだけはプロフェッショナル(「直撃!地獄拳」+「陽炎座」に訂正しようかな…)。
間違ってもお薦めはしませんが、心に「誰の挑戦でも受ける」という猪木イズムを宿した方は是非ご覧になってください。