刑事ドラマの男の花道“殉職”。
ある者は刺され、ある者は撃たれ、あるいは事故や病気で、その短い半生を閉じ、視聴者は感涙にむせぶわけですが、ここに1人、前人未到ワン&オンリーな退場をした男がいます。
沖田五郎(三浦友和)。
東大出のエリートでありながら、捜査中に受けた銃弾が元で余命1年。残り少ない人生を完全燃焼するために選んだ職場が、西部署大門軍団。
そして1年。彼に残された命の炎はあと2日…。
吐血し、痛覚も麻痺し、身体が思うに任せない状態ながら、沖田は密輸銃AK47カラシニコフの取引現場を制圧。
これが「太陽にほえろ」なら、スコッチ(沖雅也)が景気良く血を吹いて、仲間に囲まれてパトラッシュな大団円を迎えるところですが、西部署ルールは一味違います。
「その時が来たようです」と拳銃・手帳を団長に返した沖田はそのまま行方不明となり、どこぞの雪原を彷徨う後姿でエンドとなります。
殉職でも病死でもなく、失踪。
小暮課長(裕次郎)のナレーションによると退職扱いになっているようですが、通るのか、そんな方便。
ちょっと「ブレードランナー」のレプリカント、ロイ(ルドガー・ハウアー)を思わせる幕引きです。
三浦さんが飄々とした親父というパターンを確立したのはいつ頃なんでしょう。
この頃は“百恵ちゃんの旦那”というイメージを覆すために、ハードボイルド系(「獣たちの熱い眠り」とか)に出演するも、のっぺりとした平坦顔が災いしてブレイクしそこなっていた時代なんじゃないかと思います。
個人的に三浦さんが“いい感じ”になってきたのは、87年の「必殺仕事人Ⅴ風雲竜虎編」あたりかなと(飄々の代表は2003年の「茶の味」かな)。