デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

蝋燭1本2,000ルーメン。 ダリオ・アルジェントのドラキュラ

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古典的名作に監督名、それもジャンル映画の監督名が枕詞として付くとどうなるか。

 

サム・ペキンパー忠臣蔵”、“アレハンドロ・ホドロフスキー羅生門”、“ジョン・カーペンターのキリスト物語”etc.

 

あさっての方向に期待値(とハードル)が跳ね上がりますね。

 

ホラーの巨匠とブラム・ストーカー、相性は抜群のはずでしたが…。

                

ダリオ・アルジェントのドラキュラ」

2012年/ダリオ・アルジェント監督)

 

いやもう勝手に原色の世界をサスペリアのテーマに乗って疾駆する闇の貴公子、なイメージを膨らませてしまいましたが、出てきたのはいたってオーソドックスな吸血鬼譚でした。

 

良く言えば正攻法。ただ、アルジェントが撮る必然性があったのかと言うと「うーむ」。

 

個性らしきところもあります。ドラキュラの格闘シーンが結構アクティヴとか。


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チョップ一閃、首チョンパ!
 

蝙蝠ではありきたりと思ったのか、変身のバリエーションも豊富。

 

はアルジェントっぽいし、も分かります。100歩譲ってまでは許しましょう。ただアレはないだろ。ありゃ完全に別映画だ。アルジェントらしい無意味さと言えなくもないですが…。


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梟は幻想的でいい。でも蟷螂はないだろ、蟷螂は…。
 

私が本作でいちばん気になったのは明るさ

 

照明器具は蝋燭だけのはずですが、これが明るい。1本で2,000ルーメンはあるんじゃないかという明るさ。


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美術セットや小道具を余す事無く映したい、という気持ちは分からなくもないですが、バリー・リンドンを経験した後でこの明るさはあまりに不自然。

 

金掛けたテレビドラマって感じがしちゃいます。


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比べるのもどうかとは思いますが、「バリー・リンドン」の蝋燭照明。
 

ドラキュラにしろヴァン・ヘルシングドガー・ハウアー)にしろ、人物の背景がまるで描かれていないのもちと辛い。

 

記号的役割分担ではドラマに入り込むことができません。前半でさんざっぱらな特殊能力を見せておきながら、クライマックスには何も無しってのもウルトラ腰砕け。


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ドガーもアーシアも何か出てきただけって感じで…。
 

ドラキュラ映画としてもアルジェント映画にしても、いささか残念な結果になってしまいました。

 

アルジェントには死ぬ前にもう一花咲かせて欲しいなあ…。


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