処女作には監督のやりたい事が詰まっていると言いますが、確かに後のトレードマークが全部入っています。
「歓びの毒牙(キバ)」
(1969年/ダリオ・アルジェント監督)
意味ありげな邦題ですが、原題は“The Bird With The Crystal Plumage(水晶の羽を持つ鳥)”。
イタリアに旅行に来ていたアメリカ人作家が殺人事件を目撃し、という出だしは「サスペリアPart2」と同様ですが、以後の展開も全く同じ。
- 目撃時に大事な事柄を見落としている(映像によるミスディレクション)
- 事件を示唆する絵画がある。
- 犯人は黒手袋&黒レインコートにナイフ。
- 犯人を庇う第三者のミスリーディング。
- 役に立つような立たないようなやっぱり立たないイタリア警察。etc.
「サスペリアPart2」はほとんど本作のリメイクですね。
違うのは音楽がゴブリンじゃない事くらいでしょうか。
本作の音楽は、イタリア映画界でプロデューサーとしてブイブイ言わせていたダリオ父サルヴァトーレのコネでエンニオ・モリコーネが。
流石巨匠、流麗サウンドですが、やはりアルジェントの映画には勢いのあるプログレが似合います。
不気味なオブジェの並ぶ深夜の画廊で、ふたつの自動ドアに挟まれた密閉空間から目撃する殺人未遂事件は、なんとも妖しげで“いい感じ”(撮影はヴィットリオ・ストラーロ!)。
「サスペリアPart2」のプロトタイプにしてアルジェントの原点です。
※参考:「サスペリアPart2」→2008年8月20日