ライの代打に津山事件! 砂の器[2004年TBS版]
本放送時は黙ってスルーだったのですが、先般放送された玉木版があんまりな出来だったので、逆に「中居版はどうだったんだろう?」という純粋な興味が沸いてしまいました。
折角の連休なので、夜を徹して全話一気観(もう歳だから徹夜はキツい…)。
あれ? なんだ、良心的な作品だったんじゃないか…。
「日曜劇場・砂の器」(2004年1月18日~3月28日放送/福澤克雄他監督)
主役は和賀英良/本浦秀夫(中居正広)。
本作にも劇団・響の女優・成瀬あさみ(松雪泰子)というオリキャラが登場しますが、玉木版のジーラ、じゃないコーネリアス、じゃない嫌われベレー帽に比べれば、遥かに人物が描き込まれ、存在意義のある役回りになっています。
何より観ていて不快じゃない(←もの凄~く大事)。
特筆すべきは、千代吉・秀夫親子の放浪理由。
ライ病がつかえないという鬼足枷は、玉木版と同様ですが、適当に誤魔化したテレ朝に比べ、何とTBSは「村八分」+「津山事件」という更なるタブーを持ち込みました。
「犬神の悪霊(たたり)」+「丑三つの村」です。
いわれなき迫害を受けた挙句、妻を見殺しにされ、憤怒の鬼となった千代吉(原田芳雄)が、村中に火を放ち、一夜にして30人の村人を殺害・・。
このシーンはアドレナリン大分泌(個人的にはこの設定だけで2階級特進)。
※清張氏は津山事件のドキュメントも手がけているので、一応原作者繋がりのネタではあります。
まあ、10回引っ張るにはネタ不足で、後半テンポダダ崩れ、旅のシーン長すぎ、オリジナル・リスペクトの「宿命」も急緩に欠け、全体の印象は“冗長”なのですが、「丁寧なドラマを作ろう」という作り手の誠意(“脚色:橋本忍/山田洋二”をクレジットに掲げた覚悟)は伝わってきました。
なにより映画では叶わなかった千代吉と秀夫の邂逅を描けたのは収穫だったかと。
決して完成度が高いわけではないが勢いで観るものを圧倒する映画版、敵わぬとは言え善戦したTBS中居版、このふたつ(62年TBS、77年フジ、91年テレ朝は未見)の後に玉木版を作る意義はどこにあったのでしょう。
よくあのようなていたらくを晒せたものだと逆に感心してしまいました。
※参考:「犬神の悪霊(たたり)」→2008年1月8日
「丑三つの村」→2008年12月5日