デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

忌む。 狗神

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山間の村、因習、男尊女卑、近親相姦、本家と分家、平家の落人伝説、狗神の血筋、祟り、差別と暴力…。

日本の田舎の魅力が詰まっています。

狗神(2001年/原田眞人監督)

高知県。山間の村・尾峰。たったひとりで工房を切り盛りしている紙漉きの和紙職人、坊之宮美希(天海祐希)。

坊之宮の女は狗神筋でした。

外の世界から小学校教師としてやって来た青年、奴田原晃(渡部篤郎)。

二人が引き寄せられた時、村に異変が…。

婚期も逃してとうの立った女(41歳という設定)と、まだあどけなさの残る青年。親子ほど年の離れた男女の恋、という建て付けなのですが、この描写がすこぶる弱い。

白髪や老眼、村の人から婆呼ばわりされたりして年齢を強調しようとしていますが、腐っても天海、十分綺麗。

これが渡部と惹かれ合うことによって、みるみる若返っていく…のですが、埋めるギャップが小さいので、何か最近お肌の調子か良いみたいレベルの変化しか認められません。

渡部は童顔で滑舌も悪いので幼く見えますが、歳の差カップルを謳うには無理のある年齢。

もうちっと前半の天海に(不自然にならない程度の)老けメイクをさせ、相手に20代ピチピチの男優を持ってくれば、良い感じに仕上がったんじゃないかと思います。

ホラー映画として喧伝されていますが、ホラーじゃないですね。伝奇もの、が近いでしょうか。

なので、あからさまなホラー演出をしたカット(天海に睨まれた婆さんが変死するところとか、パソコンの画面が崩れて蛆が湧くところとか)が不自然に浮いています。

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こういう↖ビジュアルはない方が良かったかなぁ。

 

話の繋ぎとして撮っていなければならないカットを撮っていなかったり、キャラを印象付ける撮り方をしていないため、理解が追い付かずストレスを感じるところも多々。

全体を包む雰囲気はいい感じ。特に自然描写は新日本紀行的美しさを湛えています。

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クライマックス(惨劇の舞台)は坊之宮一族総出の“先祖祭り”。


反面、因習とか差別など負の部分の描写は通り一遍表層ひと撫で。

多分、原田眞人って人はとても真面目で真っ当な育ちの良い(こちら側から見ると「面白くない」)人なんじゃないかと思います。

KAMIKAZE TAXI」にしろ「突入せよ!「あさま山荘」事件」にしろリメイク版「日本のいちばん長い日」にしろ(全部、役所広司だ!)題材の割りに琴線に触れないのは、撮る側に影や屈折が見えないからなのかもしれません。

※チラっとWikiを覗いたら《ネットに拠らない「本物の映画ファン」の意見こそが重要(インターネット上での評論が活性化した近年の風潮は「悪貨」)》とか言っているそうで…。なるほど私とは気が合わない訳だ(このサイトも彼にとっては忌むべきものなのでしょう)。

お話の構成要素が「八つ墓村」(松竹版)、「犬神の悪霊(たたり)」と大きく被っています。

真っ向怪談話に仕上げた「八つ墓村」、意味不明なほど景気良くエンタメに振り切った「犬神の悪霊(たたり)」。立ち位置は違いますが、血の繋がらぬ兄弟みたいな関係。

是非、3本セットでご堪能ください。

★ご参考 

 

岡本喜八版100回観直しの刑 

mandarabatake.hatenablog.com

 

 

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