デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

拝啓金子監督。ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃

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念願叶ってのゴジラ演出ですが、本当にこれで良かったのかい、金子監督?

ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃」(2001年/金子修介監督)

相方の怪獣はあの3体で良かったの?

当初想定はアンギラスとバランだったそうですが、スター怪獣に改変したのは東宝の横槍?

個人的には、ここは蝦夷の地から飛び立ったバランと、熊襲の地から飛来したラドンが帝都でゴジラと鉢合わせ(まつろわぬ民族の怨念と、戦後の惰眠を貪る国家に対する英霊の怨嗟が帝都を破壊する)、という展開が良かったなぁ。

大体、地球侵略の尖兵として宇宙人に送り込まれた破壊兵器と、インファント島の守り神が大和の護国聖獣って言われても…。

主役の二人(特に新山千春)は監督の希望?

どう考えても監督の趣味じゃないですよね。大人の事情って奴でしょうか?(前田姉妹を一瞬映したのがせめてもの抵抗?)

ミニチュアワークはさておき、CGはあれでOKだったんですか?

巡洋艦あいづの全景とか、てっきり何かのシミュレーション画面かと思ったら何と実景(のつもり)。その後の海面が津波のようにせりあがるシーンなんかプレステ2以下じゃないですか。

樋口っつぁんが、こんな画作ってきたらぶっとばすんじゃないでしょうか?

で、一番問題の脚本。ガメラシリーズの「自衛隊の殲滅戦を縦軸に、市井の女性(巫女性を湛えている)のドラマを横軸に」という基本骨子は踏襲していますが、正直駄目駄目です。

宇崎と新山の父娘ドラマが陳腐の極み。新山に巫女性など微塵も無く、キャリアウーマンとしての野心も感じられず、何より演技が下手。

何気に見過ごしてしまいましたが、この人、山梨から横浜まで自転車でゴジラと同じ速さで実況しながら併走しているんですね。凄い脚力と肺活量だ。

暴走族やチンピラ、安易な動物愛護主義者やうるさいおばさんを片っ端から殺していくのも脚本家の偏執的な性格を反映しているようで、ちょっと引きます。

ガメラは問答無用な死の平等性があったから良かったんだと思うのですが。

天本英世の使い方や、シノラーの殺し方、蛍雪二郎のいつもの扱いや立ち上るきのこ雲など、いい感じのシーンも多々ありましたが、最も盛り上がるべきギドラ再生あたりで、作り手・観客双方の緊張の糸が切れている(ぶっちゃけ結末なんかどうでも良くなっている)のが致命傷。

何より伊藤和典脚本に溢れていた自衛隊LOVE!”が全く感じられないのがダメ押し的にアウト。

平成ガメラシリーズの素晴らしさが、伊藤脚本×樋口特撮の賜物であった事を改めて実感いたしました。