前年に海底軍艦をすっ飛ばし、同じ年にモスラをゴジラと戦わせ、返す刀でキングギドラを誕生させているにも関わらず、尚飽き足らずクラゲを飛ばす・・。
なんと前のめりな。これぞ挑戦。
「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964年/本多猪四郎監督)
怪獣デザインだけでなく、お話も実にチャレンジャブル。
怪獣と自衛隊の攻防のみに焦点を当てた「バラン」と真逆の方向に全力疾走。
国際ダイヤ強盗団vs警視庁外事課の戦いにダイヤGメン(なんじゃそりゃ)が絡む犯罪ドラマの味付けにドゴラを少々。
ドゴラの主食は炭素。石炭もダイヤもドゴラにとってはただのメシ、という人間の価値観をあざ笑う設定が素敵です。
出番僅かとは言え、ドゴラが巻き起こす竜巻(石炭を吸い上げる)は圧巻。触手を絡めて関門橋を持ち上げる様はもはや幽玄の境地。
で、肝心のドラマ部分が華麗に破綻(笑)。カルトの誉れを上塗りしています。
ダイヤ強盗団の悪女・若林映子が柴崎コウに色気と演技力を加えた感じでイチオシ。
裏切った彼女が、何故車を乗り捨てて逃げ場のない海に向かったのか。裏切りを知った強盗団は何故まっすぐ海に向かったのか。外事課の刑事も何故ここに駆けつけたのか。ドゴラに輪をかけて謎だらけ。
あと強盗団ボスの河津清三郎と外事課課長の田崎潤がやたら似ていて大混乱。一瞬「ん、二役?ダブル・エージェント?」
バランとセットで持っていたい特撮裏面史のマスターピースです。
※参考:「蝦夷から帝都へ。 大怪獣バラン」→2010年7月12日