松田優作逝去の翌年、丸山昇一(脚本)、仙元誠三(撮影)、桃井かおり(主演)という正に“盟友”と呼ぶに相応しい面子で作られたハードボイルド。
本来なら“もうひとつの遊戯シリーズ”くらいの誉め言葉を献上したいところですが(実際、その部脈で語られる事が多い)、監督が一見さんという致命傷が最後まで。
「女がいちばん似合う職業」(1990年/黒沢直輔監督)
何で村川透じゃなかったんでしょ。工藤栄一、澤田幸弘あたりでもいいじゃないですか。
同じ黒沢でも清の方なら、殺人鬼青年に奥行きが出来たかもしれません。
妊婦連続殺人事件を追う女刑事きぬ(桃井)。犯人は豪奢なマンションに1人住まいの謎の青年・吾郎(岡本健一)。捜査を進めるうちに二人は…。
丸山さんの脚本は悪くなく、特に桃井の先輩刑事・橋爪功(グラサンにオールバック)、後輩刑事・伊原剛志らとの会話はあけすけで面白いのですが・・。
岡本くんの犯人像を(恐らく役者も監督も)イメージできぬまま、表層をなぞった結果、ハードボイルドというよりは“お洒落でアンニュイな結局女性を差別しつつ迎合した”中途半端なメロドラマもどきになってしまいました。
ただ、どのような状況下にあっても、徹頭徹尾桃井かおりを貫いたのは立派。曲げない折れない変わらない桃井かおりがそこにいます。
多分、女がいちばん似合う職業は“女優”なんだと思います。