デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

口のでかい女が好きだ。 ヘルドライバー

イメージ 1
やりたい気持ちは分かります。が、例え高校映研の自主映画でも禁じ手なギャグというものがあります。その代表が、

“ふたつで十分ですよ”

しかもわざわざハリソン・フォード似の外人まで用意して。

屋台の名前が“寿司台風”。勿論、本作の製作レーベルである“SUSHI TYPHOON”に引っ掛けているわけですが、寒い。もう居たたまれないくらい寒い。

「ヘルドライバー」(2010年/西村喜廣監督)

謎の黒い灰によって北海道から東北地方の人間がゾンビ化してしまった近未来。

ゾンビの頂点に君臨する邪悪な母リッカ(しいなえいひ)に心臓を奪われたキカ(原裕美子)は、人工心臓を持つ鉄の体で復活。本体と直結している自家発電式日本刀型チェンソーを武器に母を目指す…。

書いていて訳分かりません。およそ合理性とか整合性というものを放棄した所からお話が始まっています。

ま、要するに撮りたい“画”を繋いで、都合のいいドラマを当てはめたって感じです。

夕張メロンに引っ掛けたゾンビの角(おでこから突起した腫瘍)とか、“GOGO夕張法案”とか、発想が小学生以下。しいなえいひに「ぐりぐりぐり~」とか言わせたい気持ちも分かりますが楽屋落ちにも程があります。

唯一、東北と関東を分断する壁から一斉に腕が突き出される「死霊のえじき」リスペクトシーンだけは、スケールの大きさで本家を凌駕しておりました。

謎の灰で東北以北がゾンビ化する過程をナレーションで済ませていますが、これがキカの声だとしたら、この期間、キカは意識不明だったはずなので(覚醒時に「何が起こったの?」と訊いている)、滅茶苦茶不自然。

日本刀型チェンソーは見た目派手ですが、多数を相手にした接近戦ではどう考えても不利な武器(普通に日本刀の方が使いやすいだろう)。

あと、この監督さん、表現が生理的に汚い。虫をぐちゃぐちゃ噛み潰す口のアップとか、プリンをぐちゅぐちゅやっている口のアップとか、「どうです、下品でしょ」と言わんばかりに撮っていますが、ゴアとグロと汚いのは本質が違います。

“気がついたら改造人間”“鉄の体で復讐”というコンセプトは「ハード・リベンジ、ミリー」と一緒(こちらも特殊造型は西村さん)ですが、遥かにスマートな仕上がりでした。

ヘルドライバーと言う割には、カーアクションが少なく、何より車がダサい。

強いて良い所を挙げると女優陣の顔。私、口の大きなヒラメ顔の女が好きでして。主演の原裕美子と悪役のしいなえいひはかなりツボなんです(同じ箱にスー・チー姐さんが入っています)。

特に髪を束ねた制服姿の原さんの嫌々顔(目を閉じて口をヘの字にして耐えている様子)は超好み(髪を下ろした覚醒後はイマイチ)。

無駄に汚いシーンと寒いギャグを削って90分で収めてくれれば(117分は長すぎだ!)、そこそこ観れる作品になったとは思うので、実に残念です。

※参考:「制服×ミニスカ×日本刀×噴血=無敵!東京残酷警察
      →2009年4月20日
     「犯罪者は容赦しないぞ! 東京残酷警察(のプロパガンダCM)」
      →2009年4月24日
     「水野美紀がいるじゃないか! ハード・リベンジ、ミリー」
      →2010年11月3日
     「ハード・リベンジ、ミリー ブラッディ・バトル」→2010年11月4日
     「椎名英姫万歳!(きりきりきりぃ) オーディション」
      →2010年11月25日