ハリウッド・リメイクには大雑把に2種類あると思います。
ひとつは、クラシックと呼ばれる作品を現代の感覚で再構築するもの(「遊星からの物体X」「スカーフェイス」)。
もうひとつは比較的最近の外国映画を自国仕様に焼き直すもの。
後者は、「他国の文化なんか興味無い&字幕読むの嫌」なアメリカ人観客と、「新しいものなんか思いつかない」製作側の需要と供給が一致した経済学的にも“正しい”作品です。
本作は典型的後者。元ネタは「ぼくのエリ 200歳の少女」。
「モールス」(2010年/マット・リーヴス監督)
順番をちょっといぢっているだけで、話の流れはオリジナルとほぼ一緒。
(なので、ストーリーに関しては2月9日のレビューをご参照ください)
まあ、こういうのは先に観た方の印象が強いものですし(それがオリジナルであれば尚更)、リメイクはハナからハンデを背負っているわけですが…。
オリジナルにあった暗喩とか隠喩とかって含みが綺麗さっぱり削ぎ落とされています。
アメリカ人向けだからって何もそこまで簡略&説明しなくても…。
被害者になる近隣住民の描写はまるっと割愛、少年の父は電話の声だけで存在感ゼロ(オリジナルではゲイを匂わせていましたが、離婚の原因は母の過剰信仰にスライド)。
驚いたのは少女(クロエ・グレース・モレッツ)がユニセックスであるという直接的描写をカットしたこと(オリジナルもボカシまみれでしたが、それは映倫の所業)。
血を吸う時の怪物メイクは下品。プールの惨劇も静謐さがなくなって見世物に堕落。人間を襲う時のCG処理も個人的にはあんまり…。
何より不満なのは、プールの惨劇の後に少女の血まみれの微笑みを見せなかった事。
ここは女優として最大の魅せ場。クロエの為にも入魂の1カットが欲しかったです。
カメラワークは光っていた(少年の母の顔を巧みに避けて少年の視線を代替)だけに残念。
両方愉しみたいと思ったらリメイクから、どちらか1本ならオリジナルをお薦めします。
余談ですが、83年という時代設定の表現はやっぱりブルー・オイスター・カルトとKISSなんですねぇ。
カーステレオからは「お前に焦がれて(Burnin’ For You)」が流れ、クロエは色褪せた「地獄の軍団」Tシャツを(判りにくいかもしれませんが写真一番下参照)。
そう言えば、ロブ・ゾンビ版「ハロウィン」でも「雷神」「死神」が流れ、少年マイケルは「地獄の軍団」Tシャツを着ていました。
ブルー・オイスター・カルト全盛期の前座はKISS(すぐに主客転倒しましたが)。70年代の終りから80年代初頭のロック・アイコンなんですね。
★ご参考