
「真に偉大な結末は常に予定調和でなければならない」
登場人物全員が、物語に対する、家族に対する持論を、薀蓄を、能書きを、小理屈を、屁理屈を語って騙ってかたり倒す。
飛行船、立ち喰い蕎麦屋、セイタカアワダチソウ、犬、銭湯、浜茶屋…、押井ワールドの記号がこれでもかと乱舞満開。
主人公は血縁のアナーキスト、四方田麿子。17歳。
「御先祖様万々歳!」(1989-1990年/OVA全6話/押井守監督)
平凡で退屈極まりない四方田家を訪れた一人の少女、麿子。
近未来からご先祖様に会う為にタイムマシンを駆って来た四方田家の末裔を名乗る少女の出現により、ひとつの家族があっさりと、物凄いスピードで、転落・崩壊していく様が描かれます。
「もし、うる星やつらのラムちゃんが、宇宙人でも何でもなく、ただの詐欺師だったら」
という発想(思いつかないよな、こんな事、普通)を、
「うる星やつらを支えていたSF的道具立てを言葉だけで突破する」
という方針で、アングラ舞台劇的に表現する、という“なんじゃそりゃそりゃ”な前衛アニメ(監督曰く「裏・うる星やつら」)です。
中盤の展開がややタルいのが難ですが、後半の「ターミネーターかよ!」なオチから、「人間の条件かよ!」な寂膜感溢るるエンディングまでは実にスリリング(アングラ・ダーク・ファンタジー?)。
どさくさまぎれに登場人物が「とんだデウスエクスマキナだけど、しょうがないか」なんて発言もしており、演劇論の教材としても使えるかも(んな訳ゃないか)。
「トワイライトQ 迷宮物件 FILE538」あたりが好きな人は是非。
興信所は愛を信じない。そして、立ち喰い蕎麦屋はSFを信じない。
※参考:「トワイライトQ 迷宮物件 FILE538」→2008年5月12日