例えば、この翌年に公開されたアニメ版「ゴルゴ13」を今観たら(少なくともCGパートは)鑑賞に堪えないと思います。
本作とて公開から30年。技術の進歩という時の流れの残酷さを目の当たりにしてしまう…のかと思いきや…。
何とかつての先端技術が時を経て一種の前衛表現に昇華されているではありませんか。
テクノロジーと映画的センスは全く別の次元に存在しているんですねえ。
「トロン」(1982年/スティーブン・リズバーガー監督)
ゲームの版権盗用に関するリアル世界のいざこざは、話をゲーム世界に持っていくための口実なので、正直どうでもいいです。
主人公フリン(ジェフ・ブリッジス)が、物質転送装置によってコンピュータの内部世界に囚われてからが本作の主題(事実、フリンが転送されてから現実世界に帰還するまでの間、リアル世界の描写は一切ありません)。
コンピュータ内部の支配者MCP(マスター・コントロール・プログラム)は、元々チェスゲームのプログラムでしたが、ネットを介して増殖・肥大。意思を持った暴君として君臨しています。
(そう言えば、スカイネットの萌芽を宿した前身プログラムもチェスゲームでしたね)
フリンは友人アランが送り込んだ監視プログラム“トロン”と共にMCP打倒を企てますが…。
後にマトリックスにパクられますが、プログラムの擬人化というアイデアが実に斬新。
内部構造の擬人化というアイデアを本作以前に形にしたのは「ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう」くらいだと思います。
そして、何と言ってもライト・サイクルですよ、お客さん。
テールランプの残光を壁に見立てて直角疾走する電子バイクのスピード感! 技術的な限界を逆手にとったアイデアは今観ても全く色褪せておりません。
昨日レビューした「究極超人あ~る」でも、R・田中一郎の愛車・轟天号が全速直角カーブをするシーンがありますが、元ネタは恐らくここでしょう。
★28年後の続編はこちら。