デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

オチを知った上で二度観に堪えるか…。 魚が出てきた日

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衝撃のラストが待ち受ける作品の明暗を分ける分水嶺はどこか。

それはオチを知った上で、そこに辿り着く過程を再トレスした時に新たな発見や興奮があるかどうかだと思います。

「サイコ」「シックス・センス」などは、ネタバレした後でも再見可能ですが、本作は…。

「魚が出てきた日」(1967年/マイケル・カコヤニス監督)

原爆2基と“何か”を封印した鋼鉄の箱を移送中の軍用機が操舵不能に。

パイロット2名は積荷を捨てて脱出。原爆1基は海中へ。残りはギリシャの寂れた小島カロス島へ。

パイロット2名も島に辿り着きますが、服は流されてブリーフ1枚。文無しな上にギリシャ語喋れず。八方塞り

極秘裏に原爆と謎の箱を回収すべく、軍の精鋭部隊が“リゾートホテル建設の視察に来た観光業者”に変装して現地入り。

全員男でゲイ集団にしか見えない軍関係者と、ブリーフ1枚で右往左往するパイロット、そして島の観光地化に浮かれまくる島民たちのけたたましい狂想曲。

1972年という“近未来”を演出しているファッションは素晴らしいです。突如押し寄せた観光客が浜辺でゴーゴーダンスを踊り狂う様は、ちょっと「南の島の若大将」的雰囲気を醸し出していて“いい感じ”。

でも、それらはお話の本筋とは関係ないんだよなぁ。

半裸でド突き合っているパイロット2名には早々に飽きますし(服と一緒に知能も海に流されたとしか思えない)、人数ばかり多い軍人たちも頭が良いのか悪いのか。

考古学者キャンディス・バーゲンの登場は絵的にはひとつの山場ですが、ストーリーにほとんど絡まないまま退場(完全にゲスト出演)。

結果、原爆と謎の箱がもたらす災厄に関するサスペンスが醸造されること無くあのラストを迎えてしまいます。

島民の浮かれ模様と、冷徹な軍の対処、その意に反して拡大する観光熱とかが描き分けられていれば、もっとラストが際立ったと思うのですが、全部コメディにしてしまう(その割に笑えない)もんだから、全員の頭が悪く見えて実にイライラします。

超クール(シニカル)なオチと、前衛的ファッションセンスという見た目でかなり評価の下駄を履かされている作品だと思います。

しかし、今の日本の状況を考えたら全然洒落になってないよな、このオチは…。