デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

子供も騙せない…。 鉄人28号[2004年実写版]

イメージ 1

『いいかね、男の子の人生は冒険から始まるんだ』

この素敵な台詞に免じて全てを水に流そうかと一瞬(0.0002秒くらい)考えましたが、駄目、無理、不可能。

監督も脚本家も(あと一部出演者も)“恥”という言葉の意味を知っているなら舌を噛むか腹を切りなさい。

「鉄人28号」(2004年/富樫森監督)

どこから手をつけて良いのか途方に暮れます。最大の失敗は時代設定を現代にした事だと思いますが、それ以前に脚本が穴だらけ。

金田博士の死因(研究所での爆発)は事故だったのか事件だったのか?

事件だとしたら犯人は誰だ? 事故だとしたら間抜けすぎないか。

まだ飛行能力を持たない鉄人を、離れ小島のような研究所からどうやって東京まで運んだんだ? 海底に直通ルートでもあったのか? 

10年も瓦礫に埋まっていた鉄人が埃ひとつついていないピカピカボディなのは何故だ?(島から泳いできたのなら分かるが、だったら濡れているはずだろう)

ロボットバトルがオフィス街で繰り広げられているのに、街全体が無人ってのはどういう事だ? 一瞬で全員避難したのか。バトルの日は国民の祝日で休日出勤禁止の法律でもあるのか?

明らかな侵略行為なのに警官の数が少な過ぎ…ってか何故自衛隊が出てこない?

咆哮一発でビルの窓ガラスが全粉砕するのは絵的にはいいかもしれんが(最初に街を破壊したのは鉄人)、指令の度に超音波発してたら不便だろ。

一度は鉄人の操縦を諦めた正太郎が、「僕に鉄人を操縦させてください!」と織部博士(中村嘉葎雄)に直訴する場面がありますが、そこ(研究所)って確か車と船(定期便とかじゃなくて個人所有船)乗り継がないと行けない孤島じゃなかったっけ? どうやって(しかも繋ぎ上は一瞬で)駆けつけたんだ?

飛行能力を備えた鉄人が颯爽と飛び出していった後、正太郎たちはどうやって(しかも繋ぎ上は一瞬で)現場に駆けつけたんだ? 専用ジェット機でも持っていたのか。島に滑走路はなかったぞ。それとも垂直離発着可能なハリヤーがあったのか?

敵ロボット、ブラック・オックスを作った宅見零児(香川照之)の動機は何だ? 遺児ヒカルの人格を反映したとか言ってるが、どこにそんな気配が?

バーチャルな操縦訓練の時は、あちこちに体感ベルトみたいなものを装着していたので分かりますが、本番で視覚操作用のゴーグル着けているだけの正太郎が、オックスに鉄人が殴られる度に痛がっていたのは何故? 鉄人と精神感応できる超能力でも持っているのか?

正太郎の同級生がチャリンコで現場に駆けつけますが、地元って事か? 人っ子ひとり一般人がいない現場にガキ3人がすんなりチャリで乗りつけられるのは何故だ?

核弾頭(核爆弾じゃないよ)を搭載したオックスを鉄人が抱えて飛んでいくクライマックス。

「爆発までに鉄人が大気圏外に出る事を祈るだけです」とか刑事に言わせていますが、どう見ても雲の上あたりで爆発しています。東京は壊滅でしょう(ってか鉄人のロケットは大気圏突破できる代物なのか)。

脚本書いた斉藤ひろし(代表作「余命1ヶ月の花嫁」「252生存者あり」「ドラゴンヘッド」)と山田耕大(代表作「セカンドバージンの女」「しあわせ家族計画」)は何がしたかったんだ?

CGに関しては文句を言う気力もありません。プレステ2以下。

これだけの騒ぎなのに担当は所轄の刑事2名(女+若手)。大塚署長柄本明)は役作り大失敗で浮きまくり。蒼井優も何しに出てきたんだか。

モノクロで、昭和30年くらいの下町を舞台にして、セットとミニチュアと光学合成とCGを駆使して、戦争の続きでも始めようとしたマッド・サイエンティストに、町工場の心意気見せたるで的職人軍団が立ち向かうみたいな展開にしてくれれば、原作逸脱していても拍手喝采だったのですが(ロボット好きが正太郎君の成長物語なんか見たいと思うか)。

“役者”が出ているだけ「デビルマン」よりマシかもしれませんが、脚本・演出は肩を並べる全方位ピント外れな失敗作でした。

ところでショタコンの方は、本作の正太郎君(池松壮亮)でも萌えるんでしょうか?