『そう、どんな攻撃にも耐えうる鉄の鎧に身を固め、底知れぬ力で居並ぶ敵を叩いて砕く!
決して倒れる事無く、死ぬ事無く、ただひたすら操縦者の意のままに戦い続ける不死身の兵士。
海であろうが、空であろうが、戦う場所を選ばない。
それが、それが、勝利することのみを目的とした完全なる兵器。鉄人! 鉄人28号!』
『冗談じゃねえ! よってたかってふざけやがって!
何が完全な兵器だ! 何が不死身の兵士だ!
そんなものがなんになる!?
今更出てきてなんになる!?
そんなものが、そんなものがあったんじゃ、戦争で死んでいった俺の家族は、俺の仲間は一体何だったんだあ! 答えてみろ! 答えてみろ! 答えてみろ!』
『もういいんだ、鉄人28号!
確かにお前は戦争のために兵器として造られた。
でも、もうお前の戦う相手はいないんだ!
もうお前の役目は終わっているんだ!
お前が必要だった時代は終わっているんだ!』
なあ、富樫森、お前、このアニメ観た上で、あの実写版作ったのか?
「鉄人28号/第1話・蘇る正太郎」
(2004年4月7日放送/松浦錠平演出)
総監督・今川泰宏によるアニメ版です。
昭和30年。終戦から10年後。高度経済成長を目前に控えた日本に太平洋戦争の亡霊が蘇る。
大戦の末期、絶望的彼我兵力差に敗走を強いられる日本軍。
戦況を打開する起死回生の大計画、それが鉄人計画でした。
しかし、試作28号の出撃命令が下った日、鉄人計画の責任者・金田博士は、伝令の指揮官を射殺、米軍に研究所の場所を密告し、生まれるはずだった息子の名前をつけた28号と共に爆煙の中に消えました。
全ての始末を弟子・敷島博士に委ねて。
第1話のアヴァン・タイトルこそ、鉄人を繰って悪人を退治する少年探偵・正太郎の雄姿が描かれていますが、本編はこの活気溢れるシーンが性質の悪い冗談に見えるくらい重いテーマの波状攻撃。
突如、東京に飛来した移送カプセル。中からは全身を包帯に巻かれ、片腕の欠損した巨大ロボットが。
それは正に傷痍軍人。
忘却の彼方に葬りたい戦争の記憶そのままの姿です。
冒頭の台詞は第2話「28号対27号」より。
『何故です、先生?!』とか言っていながら、歩き出した鉄人を見て『動いています先生! また、動いています!』と歓喜の声を上げる敷島博士の屈折した狂気が素敵です。
※ご参考