人生に必要なもの。それは愛と希望とジャージャー麺。
「彼とわたしの漂流日記」(2009年/イ・ヘジュン監督)
キム(チョン・ヨジュン)は借金苦と失恋のダブルパンチで自殺を決意。
橋から漢江(ハンガン)にスーパーフライ!…したものの気がつけばどこかの砂浜に漂着。
そこは漢江の中洲、パム島。自然保護地区に指定された無人島。眼前に大都会を眺めながら、船がなければ入る事も出る事も出来ないわたしの町のアルカトラズ。
声届かず、僅かに残っていた携帯バッテリーも切れ、キムはソウルのど真ん中でサバイバル生活をするハメに!
漂着してくる様々なゴミを活用して命を繋ぐキム。ある日、インスタント・ジャージャー麺の袋から未使用の粉末スープを発見。
ジャージャー麺!…く、喰いてえ。
草を捏ねても麺にはならない。そうだ!鳥のフンの中には未消化の種があるはずだ。それを見つけて育てれば…。ようし、喰ってやるぞ、ジャージャー麺!
キム(チョン・リュオン)は引き篭もり。
漢江を見下ろす高層マンションの一室で隠遁生活を続ける事3年(両親同居)。
ゴミに埋もれ、ネットで偽りの自分を作り上げ…、唯一の趣味は望遠レンズ装備のデジカメ(SONYのαシリーズ)による月面観測と、年に2回の防空演習で無人になる街の観察。
ある日、目の前のパム島でサバイバル生活をしている謎の男を発見。あれは誰?!
この日から、謎の男の観察が彼女の日課に。そして遂に外の世界との“交信”を決意。
彼女にとって、クローゼット(寝室)から出る事は“外出”。部屋の外、更にマンションの外に出るのは宇宙旅行に等しい大冒険。それでもわたしは行く!
女キムのメッセージは男キムに届くのか。そして、男キムはジャージャー麺を喰う事が出来るのか。
共に社会生活脱落者の烙印を押された男女のもどかしいほど実直な愛のファンタジーです。
何が悔しいって、最早邦画じゃ作れない題材をいとも簡単に料理されてしまったって事ですよ。
韓国ホラーに関しては、その遠慮も呵責も躊躇もない描写に“Jホラーの追随叶わず”と諦めておりましたが、恋愛ファンタジーでこんなもの作られちゃった日にゃ…。
電通×テレビ局+演出とチラシの裏の落書きの区別もつかない稚拙な技術しか持ち合わせていない監督(と脚本家)という屈辱の方程式に支えられている邦画界の現況を大声で嘆きたい気分です。
あ、本作を観る時は、インスタント・ジャージャー麺を買っておく事をお薦めします。絶対喰いたくなりますから。
私?…勿論喰いました。