『今の天国の流行りを知ってるか。雲に腰掛けて海の美しさを語ることさ』
『僕は海を見たことがない』
『おいおい、俺達はもうすぐ天国の扉を叩かなきゃならんのに海を見たことがないだって?!』
世の中には「一発ネタで引っ張る」映画というのがございます。その代表格が、
「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(1998年/トーマス・ヤーン監督)
脳腫瘍と骨肉腫、余命わずかと宣告されたマーチンとルディ。
偶然同じ病室になった二人ですが全く気が合いません。
病室で口論する二人が打ち解けるきっかけが面白い。
ふたつのベッドの間に飾ってあるキリストの十字架が壁から落ちて下の脇机に激突。衝撃でドアが開くと、中には1本のテキーラが…。
二人はテキーラぶらさげて病院の厨房に侵入。目的は勿論レモンと塩。
塩の大袋に指を突っ込んでついた塩を指ごとしゃぶり、レモンをかじり、テキーラを煽る。ここで冒頭の会話が。
二人は病院を抜け出し、車を盗んで一路、海へ。
盗んだベンツがトランクに現金隠したマフィアのものだったから大騒ぎ…とまあ色々悶着はあるのですが、要は死にかけた男二人が盗難車で海を目指す、ただそれだけの話。
「天国の流行り」という大法螺に乗れるかどうかが評価の分かれ目でしょうか。
テキーラはアロエに似た根生植物リュウゼツランから作られるメキシコの特産酒。
ラストシーンまで、このテキーラはまるで二人の命の残量を表すかのように肌身離さず持ち歩かれます。
終りの方にちょこっと顔出して美味しい所をごそっと持っていくルドガー・ハウアーが素敵です。
エンディングは勿論、あの名曲(カバーだけどね)。テキーラ片手に是非。