フランシス・コッポラ、幻の処女作!
アイルランドの古城で繰り広げられる惨劇!
上映時間75分! 長い!
「ディメンシャ13」(1963年/フランシス・コッポラ監督)
ロジャー・コーマン門下生だったコッポラの劇場処女作。
ビデオ発売/TV放送時のタイトルは「死霊の棲む館」。
いかにもホラーなタイトルですし、解説文にもホラーと表記されていますが、全く以ってホラーではありません。
良く言えば“心理サスペンス”。有体に言えばヒッチコックもどきのスリラーです。
ルイーズは、資産家未亡人の長男ジョンの嫁となって遺産を心待ちにしておりましたが、事もあろうに生前公開された義母の遺言状には“遺産は全て寄付”と書かれておりました。
さらに夫ジョンはルイーズと乗ったボート上で心臓発作を起こして急死。
何よ、このままじゃどう転んでもあたしの懐に遺産が入ってこないじゃない!
ルイーズはジョンの死体に重しを付けて湖中にドボン。急遽、仕事でアメリカに行った事にして時間を稼ぎ、義母に取り入って遺言状書き直しを画策…ってのがお話の導入部。
要するに「レベッカ」+「白い恐怖」。
あのコッポラが、低予算で撮った、デビュー作、という事で一部の盲目的権威主義者が下駄を履かせているようですが、感想は一言。
「うわあ、つまんねえ…」
これに比べたら、5年後にやはり師匠コーマンから耳を疑う鬼足枷(ボリス・カーロフの余った契約拘束期間2日を利用して1本作れ。但し、俺の新作「古城の亡霊」のフィルムを20分使うこと)のもと、処女作「殺人者はライフルを持っている」を撮りあげたピーター・ボグダノビッチの方が遥かに才気に溢れています。
特に、ボリス・カーロフを怪奇映画に飽きた老優というas himselfな役柄で登場させ、チャールズ・ホイットマン(タキサス・タワー乱射事件の犯人)と交錯させるという斬新な脚本をほぼ一瞬で書き上げた火事場の糞力は尊敬に値します。
残念ながら、コッポラの方は、恐らく低予算が理由であろうモノクロ映像が雰囲気醸成に貢献している事以外、特に取り上げたいと思う所がありません(多分に私がアンチ・ヒッチコックだから、という事が大きいとは思いますが)。
登場人物が出揃った所で容易に犯人の想像がついてしまう底の浅い脚本も如何なものかと。
“コッポラ原理主義者の方の為のお宝映像”以上の価値は(少なくとも私には)見出せませんでした。
※参考