デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ここはどこだ?(←脚本家の独り言) レイザーバック

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大昔、外回りの営業をやっていた頃、ちょっと考え事しながら歩いていて、自分がどこにいるのか分からなくなった(有り体に言えば迷子になった)事がありました。

多分本作の脚本家(エヴェレット・デ・ロッシュ←78年の「パトリック」とか書いています)も、きっと何か考え事をしていたのでしょう。

観終わってみれば「ジョーズエピゴーネンの王道ではあるのですが、「白鯨」かと思わせて「サイコ」、でもやっぱり「ジョーズ」な蛇行・迷走。

おかげで実に1本筋の通らない(笑)半端な映画になってしまいました。

「レイザーバック」1984年/ラッセル・マルケイ監督)

舞台は広がりたいだけ広がるオーストラリアの大荒野。

いきなり話が横っ飛びしますが、ラッセル・マルケイってオーストラリアンだったんですね。「バイオ3」が唐突に「マッドマックス2」になった理由が分かりました。

その荒地に棲息する伝説の大猪、レイザーバック。

老ハンター、ジェイクの家をレイザーバックが急襲(理由不明)。壁突き破って侵入、反対側の壁も突き破って逃走(つまり走り抜けただけ)。

この時、可愛い孫息子を引っ掛けて(?)行ったものだから、お爺ちゃん号泣。

なるほど、ここでエイハブ船長のような復讐の鬼となって…と思ったら、続くシーンはお爺ちゃんの裁判。

孫を殺した容疑…って、いらんだろ、そんな展開。爺ちゃんが孫殺す動機って何だよ。現場には大破した家とレイザーバックの足跡が残ってるだろ。

結局、証拠不十分で不起訴になるのですが、実に不愉快な展開です。

で、唐突に画面は2年後のニューヨーク。

動物愛護を訴えている女性レポーターが「オーストラリアではカンガルーが毎日殺されて犬の餌として輸出されているのよ!」と荒野にカチコミ。

おお、このお姉ちゃんが、ヒロインとなってレイザーバックと一戦交える(その過程で動物愛護の思想にヒビが入る)のか!

残念。自分勝手なモノサシで他国を糾弾しようとしたアメリカ女なんかに主役の権利が渡るはずもなく、地元の不良にボコボコにされた挙句、レイザーバックの晩御飯に。

女性レポーター失踪の知らせを受けた夫(優男)が、単身オーストラリアへ。なるほど、「サイコ」ですね、と思ったら、荒野を彷徨っているだけで進展無し。

ここでようやく、冒頭の老ハンターが、再登場。よっしゃ、優男と凸凹コンビで猪狩りですね!と思ったら、これがまた一筋縄では行かず…。

登場人物が入れ替わり立ち替わりというのは、飽きが来なくて良い(その代わり誰にも感情移入はできない)ですが、もうちっとバランスってものを考えてもらわないと。

女性レポーターをボコッた(最終的には見殺しにした)ジモティーへの復讐話なのか、四面楚歌の中、レイザーバックを仕留める事だけを生きがいにしている老人の話なのか。

どうも一番悪いのは地元の精肉工場経営者兄弟で、レイザーバックは添え物みたいな扱い。

普通、動物パニック映画は、相手の大小、事の善し悪しを問わず、最後は大爆発でケリをつけるものですが、本作はそこも微妙に中途半端。

映像は流石MTVの申し子、な仕上がりなので、ラッセル・マルケイ信奉者、動物パニックコンプリーター牡丹鍋愛好家はお楽しみ頂けるのではないかと思います。

終盤、話に絡んで来る(実質ヒロインの)サラ・キャメロン(凄ぇ役名だな)役で、「マッドマックス2」の女戦士、アーキー・ホワイトリーが出ておりました。

この人、その後見ないなぁと思ったら、2001年に37歳でお亡くなりになっているんですね。今更ですが、ご冥福をお祈りいたします。