キャラによって名前を使い分けている人がいます。
芸能人だとビートたけしと北野武、池畑慎之介とピーター、作家だと高森朝雄と梶原一騎。
二人はコインの表と裏。不可分一体の双生児。
もし、この片方が叛乱を起こしたら…。
(1993年/ジョージ・A・ロメロ監督)
ポール(ティモシー・ハットン)は純文学作家(当然、売れない)。
溜まった鬱憤を晴らしているのが、もうひとりの自分、ジョージ・スターク。
ポール名義では書けない暴力小説をスターク名義で書き飛ばしたら大ヒット。印税の大半はバイオレンス小説と言う皮肉な結果に。
ニセの顔写真と架空のプロフィール。決して人前に現れない完全な覆面作家。しかし、その正体を知った男がポールを脅迫。
やむなくポールは自分がスタークである事を公にカミング・アウトしますが、その日からポールの周りで猟奇殺人が次々と…。
捨てられたペンネームの復讐というのは言葉だけだとちょっと分かりにくいですが、悪役キャラを葬った武藤敬司の周りでグレート・ムタが暴れている、という図を想像していただければ、と(余計分かりにくいか)。
「ああ、多重人格ね」と早合点しがちですが、原作は自らもリチャード・バックマンの別ネームを持つスティーブン・キング。そんな底の浅い話にはいたしません。
スーパー・ナチュラルな題材を細かいディテールの積み重ねで、破綻無く映像化したロメロの力量にも唸らされます(ゾンビだけの人じゃないんですねえ)。
ポールの幼年期描写の中で、実はポールは双子だった(一方に取り込まれてしまった)事が明らかに(頭蓋切開したら、脳の中に眼があった、というカットは結構衝撃)。
その意味では「悪魔のシスター」「バスケット・ケース」あたりの雰囲気を下地として利用しているとも言えます。
ポールの献身的な妻役に「ストリート・オブ・ファイヤー」の女兵士エイミー・マディガン、保安官役に「ヘンリー」で猟奇連続殺人鬼を演じたマイケル・ルーカー。
当事者より脇の方が強そうです(笑)。