『多くの人間を怒らせることができて本望だ』
(テリー・ギリアム)
多くの人間とはユダヤ教徒、カトリック、プロテスタント、その他教会関係者。
怒った理由は神を冒涜したから…ではありません。自分達がコケにされたからです。
「モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン」(1979年/テリー・ジョーンズ監督)
ナザレのイエスとほぼ同時に生まれたブライアン。
成長したブライアン(グレアム・チャップマン)は「ユダヤ解放戦線(字幕だと“人民戦線ユダヤ”)」に参加し、対ローマのレジスタンス活動に身を投じますが、誤解と勘違いから救世主に祭り上げられ…。
イエス自身も登場しますが、イエスもブライアンも言っている事は至極まとも。
映画は決して彼らを馬鹿になどしてはいません(同じ英国人であるマイケル・ムアコックが書いた「この人を見よ」に比べれば、実に誠実なキリスト秘話だと思います)。
攻撃の対象は“信者”と呼ばれる人たち。
他人に依存し、意思決定を委ね、自分勝手な解釈をしつつ、単一の価値観にすがり、異なるものを排斥し、たやすく集団化し暴徒化する信者こそ、本作の攻撃目標です。
ソフトにはオリジナル英語音声に加え、いつもの愉快なメンバーによる吹替を収録。台詞(英語字幕有り)と日本語字幕と吹替が微妙に異なるので、色々組み合わせて観ると面白いと思います(やはり吹替が一番ですね)。
救世主になってしまったブライアンの元に多数の信者が押し寄せるシーンでの「ユダヤ解放戦線」リーダー(ジョン・クリーズ)の台詞。
「Can I introduce you to the man who’s letting us have the Mounts on Sunday?」
字幕だと「ブライアン、この人が説教の場を貸してくれた」ですが、吹替は、
『ここにいるのはジョージ・ハリスン。この映画のスポンサーだからね』
そう、この映画の制作費400万ドルを用意してくれたのは、ジョージ・ハリスンです。資金提供の理由は“自分が観たいから”(笑)。
音声特典として「テリー・ギリアム、エリック・アイドル、テリー・ジョーンズによる音声解説」が(別録音でジョーン・クリーズ&マイケル・ベインのものも)。
衣装やセットの一部は77年の「ナザレのイエス」(フランコ・ゼフィレッリ監督)のお下がりだとか、裏話多数。
ブライアンが憧れの女性と一夜を過ごし、全裸で自宅の窓を開けると股間のイチモツがくっきりばっちりのシーンで衝撃の一言。
『実生活のグレアムは女性に興味が無い』
…そ、そうだったのか?!
「“ブライアン”は我々(イギリス人)にとっては滑稽に聞こえる名前だ。アメリカ人にとってどうかは分からないが」(テリー・ジョーンズ)
さて、文頭のギリアムの言葉には続きがあります。
「だが、イスラム教徒だけは怒らせないように注意した」
命あってのモノダネって奴ですね。
オープニングのシャーリー・バッシーっぽい主題歌もナイスですが、エンディングの“磔にされても口笛吹いて前向きに”なハイパー・ポジティブ・ソングが最高です。