凄い。アルドリッチの「飛べ!フェニックス」で、双発双胴の輸送機をバラして単発機に改造するシーンがありますが、正にそんな感じ。
「辻褄って何?」とばかりに映像を切り刻んでコラージュ、全く別のお話にしてしまいました。
最早、妄想による脳内補完無しには話を追うことができません。
「20世紀少年 サーガ[第三夜]」
(2012年10月26日放送/堤幸彦監修)
まずは序盤のキモとなるドクター・キリコ(黒木瞳)のウィルス・ワクチン製作過程(人体実験およびともだちの元を逃げ出した経緯の回想)をまるっと割愛。
アメリカの製薬会社でワクチン精製中にともだちの手下に襲われ、ケロヨン(宮迫博之)に救出された、という説明もカットされているので、何故二人が一緒にいるのか分かりません。
ひょっとして、黒木瞳の娘の不始末に配慮して出番を削った?
次にカンナが武闘派に転向する原因になった、タイ・中国両マフィア全滅の経緯(カンナにワクチンを打たせるために一芝居打った後、ともだち府に突撃)もカット。
原作でも静かに盛り上がるシーンなんですが、あっさり削られてしまいました。
血の大晦日以降のケンジの足取り回想もカット。名曲「ボブ・レノン」のカセットテープが北海道のDJコンチに届けられたシーンもないので、ボブ・レノンのニューバージョンがラジオから流れ続けている理由も分からず。
そもそも、このDJが幼馴染のコンチであるという説明がありません。これではただのヒッピー崩れのおっさんです。
更に、コンチが「白い恋人」工場に逼塞している13番・田村マサオ(ARATA)と出会い、ヘリコプターで北海道を脱出するというシーンも無いので、北海道にいたはずのコンチが突然、万博会場に現われるテレポーテーション現象が。
驚いたのは、ウィルス散布UFOを開発したヤンボー・マーボー(佐野史郎二役)と二足歩行ロボットを開発した敷島博士の存在消滅。
当然、博士の開発した高性能ミサイル・ランチャーの出番も無し(ついでにロボットに中性子爆弾が仕込んであるという設定も無視)。
おかげで、オッチョ(豊川悦司)がランチャーで(亡き息子の力を借りて)UFOを撃ち落すシーンも、13番がヘリでUFOに体当たりする特攻シーンも丸々カット。
因みに二機のUFOは、ともだちが操作用リモコンを落とした衝撃で勝手に自爆する、というウルトラいい加減な編集になっていました。
一番凄かったのは、ともだちの“犯行告白(予言なんて嘘だよ。全部僕がやったんだ)”の割愛。
これじゃあ、地球防衛軍が武装解除する理由が分からないじゃないですか。
ユキジ(常盤貴子)の道場閉鎖とか、物語上重要ではないですが、ちょっといい場面なのでカットは残念。
ヨシツネがともだちかもしれないという子供だましにも程があるミスディレクションをカットしたのは正解ですが、やはり展開盛り沢山な155分+αの映像素材を90分強に収める編集には無理がありすぎたようです。
逆にフェスティバル会場の一瞬映るエキストラ有名人は邪魔なので(特に原口まさあきにはイラっとくる)、全部まとめて消去して欲しかったのですが…。
※参考:「愛すべき愚作、完結編。 20世紀少年〈最終章〉僕らの旗」
→2010年3月21日