熱い理想実現のためには、あらゆる行為が正当化されねばならない。
そんな“理想主義”(?)に燃えた男たち。人は彼らをクレイジー・ドクターと呼ぶ。
発想のあまりのくだらなさと猟奇さで、ちょっと観るのを躊躇しておりましたが、この程、目出度く鑑賞。
グログロぐっちょんな内容を想像していたのですが、実にストレートなサスペンス・ホラーでした。
「ムカデ人間」(2009年/トム・シックス監督)
舞台はドイツ。車でヨーロッパを旅しているイギリス人女二人が豪雨×迷子×パンクという“下痢腹に浣腸”な試練に遭遇。
助けを求めたスタイリッシュな一軒家はクレイジー・ドクターの研究室でした。
ドクターは別途拉致してきた関西ヤクザを加えた3人の口と肛門を縫い合わせ、ムカデ人間を造るのでした。
ムカデ人間自体は一発ネタ。完成してしまえば、大したドラマはありません。
作品の評価はクレイジー・ドクター、ヨーゼフ・ハイター(ディーター・ラーザー)のキャラひとつに懸かっているわけですが、これが大健闘&大金星。
大減量に成功したウド・キアな佇まい。下っ手糞なイラストでムカデ人間のシステムを語る時の青年の如き昂揚。揺ぎ無い自信。偉業を成し遂げた達成感と安らぎ。
気違い博士の歴史に新たな1ページが刻まれました。
気違い博士と言えば、「悪魔のはらわた」のフランケンシュタイン男爵(ウド・キア)や「悪魔の植物人間」のノルター教授(ドナルト・プレザンス)あたりを思い出しますが、今回は実在のドクターをご紹介しましょう。
ヨーロッパ代表は何と言っても“死の天使”ヨーゼフ・メンゲレ(←人工的にシャム接合とかしようとしていた、この道の先達)ですが、以前に取り上げているので、今日は日本代表を。
陸軍軍医中将・石井四郎博士。
ご存知、関東軍防衛給水部本部(通称号・満州七三一部隊)初代部隊長です。
七三一部隊と言えば「黒い太陽」ですが、これは中国人の中国人による中国人のためのプロパガンダ映画。
一応、森村誠一の「悪魔の飽食」を下敷きにしていますが、そもそもこの本がセンセーショナリズムを狙っただけの完全なフィクション(連載紙、赤旗だよ)。
証言者の固有名詞ゼロ。証拠写真もでっちあげ含みでミスリード満載。物証ゼロ(記載されている実験内容の幾つかは、物理的・科学的・医学的に実施不可能である事が証明されています)。
実際、非人道的な実験が行われていたという記録は発見されておらず、1997年に中国人180名による「七三一部隊細菌戦裁判」は、請求棄却判決により原告敗訴となっています。
(※ここいらへん↑のネタはWikiから拾っています)
では石井博士が赤ひげ先生だったかと言えば、それもまた違うような。
何をやっていたのか分からないという事は、何かをやっていたかもしれないという事で、いらん妄想を激しく掻き立てられはします。
さて、「ムカデ人間」ですが、終了直後に、「ムカデ人間は」…「3部作です!」という驚愕のテロップ。さ、3部作だったのか・・。
※観た時の衝撃が薄れるといけないので「ムカデ人間」そのものの写真掲載は控えました。是非、皆様の目でお確かめください。
★いきなりメタ構造化した2作目はこちら。