今月に入って何本かクラシック・モンスター・ムービーを紹介してきましたが、振り返ると何かが足りません。
「エイリアン」は宇宙船内限定サスペンス、「トレマーズ」はネヴァダでまったり、「放射能X」は地下水道で殲滅戦、「タランチュラ」はアリゾナでファイヤー、そして「メギラ」は用水路で寝込みを襲われ御臨終。
どこにも破壊がありません。
怪獣映画の魅力=破壊のカタルシス。
人間が築き上げてきた文明の象徴を尻尾一振りで瓦礫の山に変える破壊こそ怪獣映画のキモでしょう。
怪獣映画、〆の1本はこれで決まり。
「怪獣ゴルゴ」(1959年/ユージン・ローリー監督)
アイルランド沖で海底火山爆発(大波に煽られる船のミニチュアが凄くいい感じ)。
深海より現れた怪獣は捕縛され、ロンドンでゴルゴと名づけられサーカスの見世物となりますが、この怪獣はまだほんのガキンチョでした。
子供を取り戻すために親ゴルゴが一路ロンドンへ。
ここからの展開は疾風怒濤。
軍関係資料フィルムを総動員(「ラドン」のF-86Fセイバーのフィルムも流用されているらしい)して、ゴルゴ迎撃。
海上での撃退は失敗、湾にガソリンを撒いて火をつけるも怯まず(見物人巻き添え火達磨)、遂にタワー・ブリッジを粉砕して上陸、ビッグ・ベンもなぎ倒して、ピカデリー・サーカスは阿鼻叫喚の地獄絵図。
モデル・アニメやパペット操演が中心の海外怪獣映画にしては珍しい着ぐるみと巨大なミニチュア・セット。
実景(シーンによっては写真)+ミニチュア+着ぐるみ+役者の合成が実にスペクタクル。
特に気に入ったのは、ゴルゴの破壊による「人的被害」がきっちり描かれていること。
タワー・ブリッジからはぼたぼたと人がこぼれ落ち(ミニチュアからも人影が落下している)、逃げ惑う人間は次々瓦礫に埋もれ、地下鉄坑内は落盤で土砂まみれ。
いかにもヨーロッパっぽいレンガ造りのビルがガラガラと倒壊していく様は怪獣映画かくあるべし、なカタルシス満開です。78分というタイトなランニングもGood。
元々製作総指揮のフランク&モーリス・キングは日本を舞台にした怪獣映画を企画していたようで、実にゴジラを意識した画作りになっています。
反面、子怪獣を取り戻しに来る親怪獣というプロットは日活の「ガッパ」に引き継がれています。
作った着ぐるみが1体だけだったので、親子同時のシーンは合成もしくは子供が人形。カットによって2体の尺が違うのはご愛嬌。
※参考:「リドサウルス対リー・ヴァン・クリーフ! 原子怪獣現わる」→2009年1月24日