デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ロサンゼルス戒厳令! 放射能X[THEM]

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『これが1945年の原爆実験の影響だとしたら、その後に行った核実験の影響は?』

山根博士の名台詞、「あのゴジラが最後の一匹とは思えない」にぴたりと符合。

共に製作は1954年。日本公開も同年。ただし、本作の方が3ヶ月早いオリジナルです。

放射能X」(1954年/ゴードン・ダグラス監督)


今週は海外の古典的怪獣映画を連続紹介してみようと思います。

ニューメキシコの砂漠地帯で大破した1台のキャンピングカー。

近くを放心状態で歩いていた少女は何かを見たショックで失語症に(抱いているセルロイドの人形の頭部がパックリ割れている辺り芸が細かい)。

近くの雑貨屋も景気良く破壊されて主人は死体。床には物凄い力で捻じ曲げられたライフルと砂糖。そして見た事も無い形の足跡。

一体何があったんだ…。

というミステリー調の導入部がいい感じ。

州警察とFBIの合同捜査本部に招聘されたのは、昆虫学の世界的権威メドフォード博士とその娘。調査の結果、彼らが出した結論は・・

犯人は原爆実験による突然変異で巨大化した肉食大蟻。

やがて姿を現す3mを超える蟻の大群。シアン性毒煙で巣内を掃討したものの、女王蟻は既に飛び立った後でした。

怪獣映画にありがちな「蟻だ」「戦車だ」「爆弾だ」という短絡思考ではなく、きっちり蟻の生態を考えた上で殲滅作戦を立てるという“当たり前”な感じが良いですね。

さらにありがちな「生意気なガキ」「喚くだけの女」「主人公に意味も無く敵対する上司」がいないというのも、好印象に拍車をかけています。

ロサンゼルスの地下水道に巣を作り繁殖を始める女王蟻。戒厳令を敷き、ジープの編隊を作って突入する軍隊という終盤はなかなかに燃えます。

が、ここまでがちと長い。

あと15分早く戒厳令が敷かれていればなあ・・。

生き残った少女、複数固体のモンスター、産卵による増殖、卵の中に透けて見えるニュルリと動く幼体など、「エイリアン2」に多大なる影響を与えていると思います。

本作の原題は「THEM」。失語症の少女が蟻酸の臭いを嗅いで記憶が戻り「やつらよ!」と叫ぶところがきているようですが、DVD特典の予告を見ると「Terror Horror Excitement Mystery」という言葉遊びになっていました。

※参考:蟻の映画と言えば・・・。
 「蟻が、蟻が演技しとる! フェイズⅣ/戦慄!昆虫パニック」→2011年4月8日