流石は「エクソシスト」がヒットした瞬間、「レディ・イポリタの恋人/夢魔」を撮った人です。
「オーメン」から間髪入れずに撮り飛ばしたバッタもん…のはずなのですが、妙にオリジナリティに富んだ味わい深い仕上がりになっています。
ソフト化しただけでも大したものなのに、新たにつけた肩書きが“原発ホラー”。誰に喧嘩売ってるんだアイ・ヴィー・シー。
「悪魔が最後にやって来る![インターナショナル・バージョン]」(1977年/アルベルト・デ・マルチーノ監督)
サハラ砂漠に原子力発電所を建設しようと画策するケイン(カーク・ダグラス)。
やがて彼は自分の建てようとしている原発が、聖書の黙示録に暗示されている“七つの頭と十の角を持った悪魔”であることを悟ります。
建設に反対するものは次々と謎の死を。
ケインに代わり、会社の実権を掌握していく一人息子エンジェル。彼は反キリストなのか。
「オーメン」(1作目)直後の作品ですが、本家のその後の展開(特にダミアン・ソーンによるソーン財閥の掌握)を予見しています。
予算僅少とは言え、時折意表を衝くゴア描写が挟まれる辺りはイタリアの矜持でしょうか。
ヘリコプターのプロペラによる頭部損壊(デコチョンパ。写真上)は、ロメロ版「ゾンビ」に先んずること1年のオリジナル。
超キュートなヒロイン、アゴスティーナ・ベリ(どこかで観た事あるなぁと思ったら「SEX発電」の人か…)の乳出し大サービスも僥倖でしたが、カーク・ダグラスのフルチン・ダッシュもなかなか…。
とは言え、一番の見所、いや聴き所はエンニオ・モリコーネの音楽。
ちょっと風が強くなっただけなのに、モリコーネの音楽が被ると「な、何かが起きる!」とドキドキしてしまいます(実際、起きるのですが…)。
モリコーネは77年だけで「エクソシスト2」、「オルカ」、本作その他と八面六臂の大活躍。
旋律から戦慄まで、素晴らしいスコアを提供しています。
因みに本作は日本公開版とは異なるエンディングを迎えるインターナショナル・バージョン。
最後の見せ場をごっそり割愛しており、スカッと爽やかな終わり方が好きな人には物足りないかもしれません。
ただ個人的にはこのバージョンの方が余韻(一体どれだけの人が本作に余韻を求めているのかってのはまた別の話)があって好きです。
※参考:「イタリアの悪魔はやらしいぞ。 レディ・イポリタの恋人/夢魔」→2008年8月26日