ウィリアム・ガードラー。職業:二番煎じ監督。
デビュー作から一貫してパクリ一筋。
あっちから怒られ、こっちから訴えられしつつ、遂にはスーパーナチュラルの大傑作「マニトウ」を世に放つも、次回作のロケハン中にヘリコプター事故で急逝(1978年1月21日。享年31歳)。
なんと劇的な。まるでジェームス・ディーンじゃないですか。
こんな凄い監督が未だ誰の口からも語られようとしないとは理不尽の極み。不憫の表面張力。
「ジョーズ」エピゴーネンとしてはダンテの「ピラニア」が一番と言われていますが、好き嫌いだけで言えばガードラーの「グリズリー」の方が好きです。
「エクソシスト」エピゴーネンには「デアボリカ」や「夢魔」がありますが、味わい一番は本作だと思います。
「アビィ」(1974年/ウィリアム・ガードラー監督)
内容が「エクソシスト」に酷似している(パクリなんだから当たり前だ!)という理由でワーナーから訴えられ敗訴してしまったため上映中止に追い込まれてしまった不遇の作品です。
アビィは悪魔に取り憑かれる人妻の名前。
新機軸なのは出演者全員が黒人だという事。
教会の聖歌隊も務める敬虔な信者アビィが突如奇行に。取り憑いた悪魔がH系なのでセックス&バイオレンス方面で大暴れ。
原因は旦那(神父)の父親の考古学者。
ナイジェリアの遺跡で悪魔が封印された民芸品(?)を開けてしまったから…らしいのですが、何で遠く離れたアビィの所まで出張憑依したのかは不明。
テンポが異様に良い。理由は簡単。怪奇現象のイベントが起きたところで話を引っ張らず(オチをつけずに)とっとと次のイベントに行ってしまうから。
わあ、こんな事になってどうしよう…という観客の不安など知った事かばかりに、で翌日、みたいなノリで話が進むので余計な心配をする必要がありません。
考古学者のお父ちゃんがうっかり悪魔解き放っちゃった時なんか、突風ドーン、電撃バーン、親父も助手もどびゅーんばきゅーんで、どう考えても“全滅”なシチュエーションでしたが、次のカットでは親父何食わぬ顔で研究続行。
フリードキンがディレクターズ・カット版で多用したサブリミナル編集(悪魔の顔が一瞬映る)を、これでもかとばかりに先取り。
またこの挿入されるカットが「本気かよ?!」な顔ばかり(4枚組写真参照)。例え一瞬の映像でも破壊力抜群(目を疑いました)。
アビィの兄さん(刑事)役の人、見たことあるなぁと思ったら、「要塞警察」のビショップさんじゃないですか。
息子(アビィ夫)からの連絡で状況を知った考古学親父は急ぎ帰郷。病院を脱走したアビィを追い詰めた最終決戦場所は…ソウル・バー!
ファンキーだねえ。
こんな素敵な映画を訴えるなんてワーナーも懐が狭い。
もし、ガードラーが生きていたら…一体どんな二番煎じを撮っていたのでしょう。
惜しい人を亡くしました。