悪魔祓い(エクソシスト)ものなのですが、これまでは“悪魔憑き”で通っていた話が“反キリスト(Antichrist)誕生”に置き換わっています。
「アナーキン・ザ・UK」(セックス・ピストルズ)の“♪あ~いあ~むああんちくらいすと!”のAntichristです(ウィリアム・デフォーがシャルロット・ゲンズブールの※※を××する話ではない)。
反キリストは『俺ぁキリストなんざ認めねえぞ!』って人ではなく、“イエス・キリストに偽装して、イエスの教えに背く者”。
いいじゃん、別に悪魔憑きで…。
「バチカン・テープ」
(2015年/マーク・エヴェルダイン監督)
バチカン・テープというのは、バチカンに所蔵されている悪魔憑き現象の記録映像。
OPでそのアーカイブの一端が表示(なかなかに気色悪くていい感じ)されるのですが、これが後のお話に絡んでくるかと言うと全然。
まあ、バチカンがそういうコレクションをしているという事にインスパイアされただけのようです。
これまでなら、その記録性に鑑み、全編POVになっちゃう所ですが、そこは監視カメラ、記録映像を織り交ぜつつも、あくまで映画という体になっているので、映像的なストレスはありません。
憑りつかれるのは27歳のアメリカ女性アンジェラ(オリヴィア・テイラー・ダドリー)。
言動が少しずつおかしくなり、やがて面妖な現象を引き起こす過程が丁寧に描かれています。←ここ退屈と感じる人もいるようですが、私は特に。
で、あれやこれやの段取り踏んで悪魔憑きと認定されたアンジェラの元にバチカンからエクソシストとしてロサーノ神父(マイケル・ペーニャ)が派遣され、クライマックスに雪崩れ込むのですが、ここが弱い。
実は母親が売春婦でアンジェラ産むと同時にトンズラこいた事とか父親の口から語られるだけで物語に絡んできません。
実は幼少期に悪魔憑きになったことがあるロサーノ神父も、本人から一言説明があるだけで、悪魔側がそこを抉るとかありません。
困った事にこのロサーノ神父のキャラ立ちが悪く、自分では祓えないと知るや単品売りされていたメギドの短剣のようなものを出してアンジェラを亡き者にしようと…っておいおいそれただの殺人だろ。
いやまあ、ロバート・ソーンもダミアン殺そうとしたけどね。でも聖職者なんだからもちっと頑張ろうよ。
そもそもバチカンの描き方が秘密結社みたいで、実はロサーノ神父が悪魔に操られた反キリスト生誕助産婦さんなんじゃないかと疑いながら観ておりました。
結局、アンジェラが鎧袖一触で薙ぎ倒して新しい時代へ…となるのですが、バチカン側がヘタレなので心情的には「GO!GO!アンジェラ」でした。
悪魔祓いものを観る度に感じるのですが、信仰を失った男と科学に見捨てられた女が出会い、運命に導かれた神父と共にパズズに挑む「エクソシスト」は、その骨格からして抜きんでていたんだなぁと思います。
刑事役で一瞬マイケル・パレが。お元気そうで何よりです。