冒頭、延々8分に渡って描写されるハイスピード映像。
それは鬱病患者の心象風景であり、終末への恐怖であり、滅びの瞬間そのものであったりする訳ですが、この映像を退屈だと思ったら、即リタイアしてしまう事をお薦めします。
「タルコフスキーかよ!」と突っ込みを入れつつも魅了されてしまった人には、至福の135分が待っています。
ジャスティン(キルステン・ダンスト)とマイケル(アレキサンダー・スカルスガルド)は2時間遅れで結婚式披露宴会場に向かっていました。
披露宴を仕切るのは性格から胸の大きさまで対照的なジャスティンの姉クレア(シャルロット・ゲンズブール)とその夫ジョン(キーファー・サザーランド←大富豪)。
しかし、情緒不安定なジャスティンは周りに合わせる事ができず、式は散々(あの女の顔なんか見たくない!と言って常に片手で視界を覆っているウェディング・プランナーのウド・キアが笑かせてくれます)。
頭上には地球に接近しつつある惑星メランコリアが…。
この前半の結婚式風景(ジャスティンの身勝手な応対)にイラ立つ人が多いかもしれませんが、鬱病患者に結婚式なんか無理!(非難する方が間違っている)
夫のリンゴ園プレゼントなんて重荷以外の何物でもありません。
正しくあらねばならない、というプレッシャーに押し潰されそうになるジャスティン。
それから7週間後。
ジャスティンはクレアの元に身を寄せ、見上げれば月よりデカくなったメランコリアが。
衝突の不安に壊れていく周囲の人々。
最初に科学者であるジョンが。続いて常識人であるクレアが。独りジャスティンだけが泰然と客観的な視点を保っている…。
そしてやってくる終末の日。
最後まで観ると、冒頭のハイスピード映像が何を意味していたのかが分かります。
姉妹の父にジョン・ハート、母にシャーロット・ランプリングと無駄に豪華。
惑星が接近した時の影響など科学的な検証は綺麗にすっ飛ばしていますが、ディザスター・ムービーではないので、(メランコリアは)単に滅亡の象徴くらいに捉えておけば良いと思います。
まるで結界があるかのように渡る事が出来ない小さな橋。衝突直前に辿り着いた存在しないはずの19番ホール…。
あちこちに謎が散りばめられているので解いてみるのも一興かも。
こういうデストピア映画は好きですね。