気がつけば夜の校庭らしき場所。
目の前には化け物みたいな銃を構えた少女。
ここはどこだ? いやその前に…俺は誰だ?
そこは死後の世界。生徒総数2,000人を越える全寮制の高校、天上学園。理不尽な人生を送り、納得のいかない死に方をした若者が集まる場所。
天使の管理する小さな箱庭。この学校で規律を守り楽しい学園生活を送ると死を受け入れられ成仏(消滅・転生)できるという。
冗談じゃないわ! そんな都合のいい話は認めない。あんな理不尽を受け入れる事なんて出来ない! あの人生をもたらしたのが神ならば、私は神を許さない! 天使を倒し、神を引きずり出してやる!
山田正紀「神狩り」を思わせる“まつろわぬ者の叛逆”。器と設定は最高だったのですが…。
「Angel Beats エンジェル・ビーツ[北米版BD-BOX]」(2010年4月-6月放送/岸誠二監督)
主人公は死後の世界に放り込まれた少年。覚えているのは音無という苗字だけ。
何故、自分はこの世界に来たのか? 少女ゆりの勧めで天使に抗う「死んだ世界戦線」に入隊する音無。
最初は記憶を取り戻すまでの時間稼ぎのつもりでしたが、徐々に戦線のメンバーとの仲間意識に目覚め…。
繰り返しますが設定は最高です。天使・かなでがグランドピアノを奏でるOPはこれだけで音楽と映像が見事に一体化したひとつの作品となっています。
本作の欠点は1クール13話という尺を作り手が全くコントロールできなかった、という事に尽きます。
キャラ識別が困難な程に多すぎる登場人物。深堀はおろか交通整理もままならず、一部は完全にエキストラ状態。
お話の展開に応じて人数や立ち位置の変わるEDは凄く良かったのですが…。
生前の様子が語られるのは一部のメインキャラだけなので、感情移入もできず、当然の帰結として大部分の戦線メンバーは消滅シーン(本来なら最大の見せ場なのに!)すら描かれません。
そのキャラもデジャブ満載。
ミサト+ハルヒなゆり。綾波+長門なかなで。特徴の無いのが特徴の大山くんはハルヒの国木田とほぼ同一人物。
左:大山、右:国木田
死後の世界という超特殊な環境を設定しておきながら、世界観の設定がウルトラいい加減。
学園の外には山篭りや川釣ができる自然があり…一体どこからどこまでが境界線なんだ。その外に出て行こうとする者はいなかったのか。
学食の食券を吸い上げるトルネード作戦に何の意味があるんだ? 音無、普通に自販機で食券買ってたじゃん。金はどこから?
前半蛇行、後半光速なテンポの悪さも含めて脚本は最初から最後まで破綻しまくっています。うまく作れば笑いと涙の痛快作になったでしょうに。残念。
天使と看做されている生徒会長・立華かなでが魅力的すぎるくらい魅力的なのと、音楽が素晴らしかったのは収穫でしたが。
因みに、BDのBOXは国内未発売。単品を集めると余裕で5万円を超えますが、北米版(写真下)なら13話+OVAが2枚に収まって5,000円ちょっとです。