デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

一幅の絵、一篇の詩。 ナイトライダーズ

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『大切なのは掟を守って生きることだ』

『人間は死ぬが理想は死なない』

静謐。詩的。ゾンビだけがロメロじゃない。

天国の門」(マイケル・チミノ監督)の歴史的大コケに端を発する“ユナイト倒産”→“MGM買収”→“海外興行権CIC移転”→“ユナイト日本支局消滅”という壮大な玉突き現象によって日本公開がお蔵入りになってしまった幻の作品が遂にソフト化されました。

 

ナイトライダーズ

(1981年/ジョージ・A・ロメロ監督)


2003年10月にテレビ朝日「シネマスクランブル」という枠で一度だけ地上波放送された事があるのですが、この枠、毎回エンドクレジットをまるっと割愛するワイルドな編集がされておりまして。

盛り上がった所でズバッと終わらせてエンドクレジットで余韻を残す、なんていう演出の作品が放送されると、話の途中でいきなり“♪ビ~ック、ビックビックビックカメラ”とCMに切り替わってそれっきり。

本作もクレジット直前ぶった斬りバージョンでした。本編中のカットも含めて完全版を観たいと長らく願っておりましたが、ようやく本懐。ありがとうスティングレイ。

中世の鎧に身を包み、馬をバイクに乗り換えた旅芸人一座の物語。

「ロック・ユー!」の馬上槍試合をバイクで行うモーターショーは、普通に考えれば単なるサーカスですが、リーダーであるビリー(エド・ハリス)にとっては騎士道精神に貫かれた聖なる儀式。

沐浴をすませ、心を清め、姫と共に愛車に跨り疾走するビリーを仰角ハイスピードで捉えたオープニングは一幅の絵。

しかし、大きくなりすぎた所帯と経費、彼らを飯の種にしようとするプロモーターの甘言が一枚岩の連帯に亀裂を生じさせ…。

ひとりのカリスマを中心にしたコミューン、バイクという小道具による移動、ほろ苦い結末。中世騎士道を材に取ってはいますが、これはロメロによるロード・ムービー。遅れてきたアメリカン・ニュー・シネマ

若き野心家ライダー、モーガンを演じたトム・サヴィーニ(写真3枚目)が素晴らしい。

お遊び出演ではなく、きっちり役者として参加しています。

『あなたは自分が好きなだけでしょ』

『ああ。クズは自分で自分を愛さないとな』

ビリーがかつてサインを断った少年ビリーに、(学校の教室まで乗り込んで)自らの剣を託すシーン(写真下)は、「ビッグ・ウェンズデー」のラスト(ジャン・マイケル・ビンセントがサーフボードを若者に託す)を重ねてしまいました。

こうして物語は継承されていくんですねえ…。