駄目さ加減が突き抜けると一種の爽快感に変わる、という生態反応は「プラン9」や「ロボット・モンスター」等が証明しているわけですが、本作も脱力の殿堂入りに相応しいトラッシュな名作です。
「魔の巣 MANOS」
(1966年/ハロルド・P・ウォーレン監督)
MANOSはスペイン語で“手”。これをそのまま「魔の巣」と訳した人は相当な手練と言えるでしょう。
お話は簡単。車でバカンスに出かけた一家(夫婦+娘+犬)が道に迷い、怪しげな宿に泊まるハメになりましたが、宿のオーナーは一夫多妻の邪教親父でしたとさ。
上映時間68分。長い!(笑)
登場人物全員の行動が意味不明。編集がド素人なので時間経過の描写が滅茶苦茶。
シーンがカットバックされる度に、“お前まだ走っていたのか?”“君たちまだ取っ組み合いをしていたのか?”“お前今部屋にいたのに何故砂漠にいる?”“お前さっきからずっと夫の名前を呼び続けていたのか?”の連続。
途中、3回に渡って車でイチャついているカップルをお巡りさんが嗜める、というカットが挿入されるのですが、アベックもお巡りさんもお話の本筋には一切絡みません。
カップルもキスから一向に進展せず。いい加減次に進めよ(笑)。
聞けば、女優さんの方が撮影中に脚を折ってしまい、本来の役柄を演じる事が出なくなったため、急遽車でイチャコラというシーンになってしまったんだとか。
IMDbのレーティングは4月7日現在で1.9/10(投票数27,338人)。押しも押されぬ駄目映画です。
IMDbのトリヴィアによると、「本作は1回に僅か36秒しか記録できない携帯カメラで撮影され、音声も無し。後から二人の男性と一人の女性によって全ての台詞がアテレコされた」んだそうです。
ほとんどfrogmanじゃないですか。
見所は邪教親父のコスチューム・デザインのみ。このマント(?)をデザインした人には何かご褒美を上げてください。
誰も望んでいないと思いますが、2011年に本作のオリジナル16mmリバーサル・フィルムが発見され、近日これをレストアしたものをベースにしたBlu-rayが発売される模様です。
いらない…。