デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

追悼:リチャード・マシスン。 ある日どこかで

イメージ 1
作家リチャード・マシスンがお亡くなりになりました。

6月23日(現地時間)。カリフォルニアの自宅で。87歳。自然死。

トワイライト・ゾーン」をはじめ原作・脚本数知れず。

「激突!」「縮みゆく人間」「地球最後の男」「ヘルハウス」「運命のボタン」「リアル・スティール」…。

中には微妙な出来の映画もありますが、原作はどれも珠玉。

人間の存在の不条理を描かせたら右に出る者無しな人でしたが、意外や恋愛モノも得意でした。

狂おしくも切ない運命に抗う男女の物語。

ある日どこかで(1980年/リチャード・マシスン原作・脚本、ジュノー・シュウォーク監督)

1972年。新進の劇作家リチャード(クリストファー・リーヴ)は母校で初演を迎えていました。

そこに現われたひとりの老婦人。彼女はリチャードに懐中時計を渡すと一言、

「Come Back to Me」

と告げて去っていきました。

8年後(つまり映画製作時の現在)、リチャードはふと立ち寄ったグランド・ホテルの資料室で一枚の写真に心奪われます。

それは昔、グランド・ホテルを訪れた舞台女優エリーズ・マッケナ(ジェーン・シーモア)の肖像画。カメラから少し外れた視線。何を見て微笑んでいるのだろう。

その写真が撮影されたのは1912年。リチャードは生まれてもいない遠い昔。しかし、そんな事は関係ない。正に一目惚れ。

エリーズの記事、資料を集めるリチャード。彼女は既にこの世の人ではありませんでした。

そしてリチャードは知ります。8年前、自分に懐中時計を渡した老婦人こそエリーズ・マッケナであった事を。

『私の元に帰ってきて』

彼女の望み通り帰る決意をするリチャード。68年の時間を遡って。

全編に渡って紗のかかった、全てが夢であったかのような画面。

写真撮影の時、エリーズの視線の先にあったもの。たった1枚のコインによって引き裂かれる時空。過酷過ぎる別離と邂逅。

燃える昆虫軍団」「ジョーズ2」の監督が、「激突」「ヘルハウス」の原作者が、そして「スーパーマン」の俳優が、こんな切ないラヴ・ストーリーを紡ぐとは。

リチャード・マシスン、そして一足先に天に昇ったクリストファー・リーヴ

ご冥福をお祈りいたします。