悪魔もエンタも足りない。 スクワッド/荒野に棲む悪夢
ミリタリー・ホラーというジャンルの面白さは、あからさまな非日常的空間が根源的恐怖に侵食される意外性にある、と勝手に定義してみます。
南米コロンビア。音信途絶した山岳の軍事基地。
調査に趣いた9名の特殊部隊が遭遇した恐怖とは?
「スクワッド/荒野に棲む悪夢」(2011年/ハイメ・オソリオ・マルケス監督)
原題「EL PARAMO」はスペイン語で荒野。英題「THE SQUAD」は分隊。併せ技にしたのが邦題です。
内線が続くコロンビアという舞台設定がそそります(製作はコロンビア/アルゼンチン/スペイン合作)。
霧に包まれた軍事基地は無人。机・床・壁は血まみれ。ゲリラなら当然盗んでいくであろう武器弾薬は手付かずのまま放置。
部屋の壁には悪霊除けの呪文。その奥からかすかな物音。
壁を叩き壊すと中の僅かな空間に拘束された女性が…。
「お前は誰だ!? どこから来た?! 基地の人間はどこに行った?!」
何を聞いても女は獣のように唸るのみ。何がどうなっているのだ…。
既に始まってから結構時間が経過していますが、この出だしは結構いい感じです。
実はこの分隊、本作戦前にとある村でごく普通の幸せ家族をゲリラと誤認して皆殺しにしてしまった、というトラウマを経験しています。
つまり、ここに来た時点で全員テンパッていたのです(本作戦から合流したエライ人を除く)。
基地に残された日誌から、この女が現われてから基地内に何かが蔓延し、感染し、女の処置を巡って対立が深まっていった事が分かります。
この女は悪魔なのか…。
周囲には風と霧と闇しかない荒野というのは、雪と氷に閉ざされた極地も同然で、となると当然思い浮かぶのはあの作品。
疑心暗鬼に駆られた精鋭部隊が闇の中でひとり、またひとり。
と書くとすげー面白そうに聞こえるかもしれませんが、倍速で観ても結構キツいものがありました。
手持ちカメラによるアップの多用、なかなか進展しないお話、やたらもったいぶった割にはさほど意外でもなかった過去のトラウマ…。
神経症になった軍人たちの壊れっぷりもちとウザい。無駄に思わせぶりなエンディングが安さを上塗り…。
巧く作れば「物体X」と同じ箱に入る作品になったかもしれないのに惜しいなぁ…と思ったのは私だけではないようで、ハリウッド・リメイクが決定しているようです。
アメリカン・エンターテイメントをたっぷり注入してください。