『この国では成長途上の女性のことを少女って呼ぶんだろ? だったら、やがて魔女になる君たちのことは魔法少女って呼ぶべきだよね』
もし、魔法少女という冠(とファンシーなキャラデザ)から「モモとかマミとかドレミとかと同じ箱の話なんだろ」と思っている人(俺だ!)がいたら今すぐ悔い改めましょう。
ダークファンタジーという安易なカテゴライズが土下座したまま後ずさっていくノーマーシィな美少女残酷物語。
「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語」(2012年/新房昭之総監督)
TV版の総集編ですが、実に良くまとまっています。12話観るのはちょっと、という人はここから入る事をお薦めします。
少し未来。新興の地方都市・見滝原に暮らす平凡な中学2年生、鹿目まどか。
彼女の通う見滝原中学に転向してきた少女、暁美ほむら。
初対面でありながら、まどかに忠告めいた言を浴びせ続けるほむらの真意は。
「あなたはやさしすぎる。忘れないで。そのやさしさがもっと大きな悲しみを呼ぶこともある」
そしてまどかの前に現われた犬のような愛らしい姿をした謎の生き物キュゥべえ。
「どんな願いもひとつだけ叶えてあげる。そのかわり、僕と契約して魔法少女になって」
魔法少女とは人間に害をなす存在“魔女”を狩る者。ほむらは魔法少女でした。
先輩魔法少女としてまどかをいざなう巴マミ、自らの願いと引き換えに魔法少女になった親友・美樹さやか、徹頭徹尾利己主義を貫こうとする佐倉杏子の狭間で傍観者を演じ続けるまどか。
奇蹟と引き換えの能力。運命。大きすぎる代償。
「奇蹟はね、本当なら人の命でさえ贖えるものじゃないの。それを売って歩いているのがあいつ」
「奇蹟ってのはタダじゃないんだ。希望を祈ればそれと同じ分だけの絶望が撒き散らされる」
「私は私のやり方で闘い続けるわ。それがあなたの邪魔になるのなら、前みたいに殺しに来ればいい」
「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。私たち魔法少女ってそういう仕組みだったんだね」
「悔しいけどね、正しいことだけを積み上げていけばハッピーエンドが手に入るわけじゃない…」
ひとり、またひとりと物語から脱落していく魔法少女。その修羅の光景を表情の無い顔で見つめ続けるキュゥべえ。
最強にして最悪の魔女、ワルプルギスの夜がやって来る…(後編につづく)。