「恐るべき能力だった。まるで、何万冊もの書物がある図書館か、途方も無い演算力を持つコンピュータのようだった。私は彼を“脳男”と名づけたよ」
生まれつき感情無し。痛覚無し。しかし、一度目にしたものは写真的記憶力でインプットされる。世界中のどの人間よりも豊富なデータバンクを持ちながら、他人から指示を与えられなければ排泄も食事もできない。
肉体の記憶は徒手空拳の殺人技術。心の記憶は祖父が残した一言。「悪を滅ぼせ!」
そこに悪があるから殺しに行く…純粋正義の報復者、それが、
「脳男」(2013年/瀧本智行監督)
連続爆殺魔のアジトで拘束されたひとりの男。自称・鈴木一郎(生田斗真)。
彼の精神鑑定を依頼された精神科医・鷲谷真梨子(松雪泰子)。
一切の感情を封印したかのような鈴木に興味を覚えた真梨子は鈴木の過去を探っていく…。
“脳男”というキャラは偉いこと魅力的。生田斗真もイメージに負けない役作りをしています。
松雪泰子は可も無く不可も無くですが、彼女の母(重度の精神疾患)と彼女の患者(母が精神を煩う原因となった殺人事件の犯人)が存在感抜群。
と、ここまではOKだったのですが、脳男と対峙する事になる連続爆殺魔(二階堂ふみ&水沢ゆりあ)がにっちもさっちも。
それなりに因業背負っている設定なのですが、キャラも演技も薄い・安い・軽い。どう見積もっても、バカな中二病のガキにしか見えません(正直、不愉快千万)。
脳男の向こうを張るには小物過ぎます。
にも関わらず、こいつらのせいで人死にまくり。こんなに殺す必要がどこにある? 死体の数が多ければ問題作だとでも思っているのか。
三池の劣化コピー(もしくは「ソウ」の表層的模倣)のような猟奇シーンも嫌悪感とイライラが募るばかりで全く盛り上がりません。
刑事役の江口洋介が絵に描いたようなステレオタイプの直情バカなのもマイナス。こいつが余計な事しなけりゃ後の惨事が防げたものを…。
125分を飽きずに観せ切るパワーはありますが、後味は良くありません。
善意と信頼に蹴たぐりかますエピローグはナイスでしたが。
エンドロールはまさかのキングクリムゾン。久しぶりに聴きましたがやっぱり名曲。つい「クリムゾンキングの宮殿」(写真一番下)をひこずり出してしまいました。