ひらがなで書くとついアトミックな方を連想してしまいますが、これは“現代視覚文化研究会”の略。“現視研”です。
大学生となってサークル選びに苦戦していた笹原完士が迷い込んだのは、漫画、アニメ、ラノベ、ゲーム、造型、コスプレ、同人誌など幅広い研究対象を持つ謎の集団、“現代視覚文化研究会”でした。
これまで誰にもオタク趣味を公言できなかった笹原はなし崩しに入会。
これと言った活動もせず、だらだらと語らうだけのサークルでしたが、1年生2名(笹原と高坂真琴)の入部を契機に少しずつ活気が…。
ここでのオタクのハードルは決して高くありません。ルパン談義(大隈派、宮崎派、2期派、古川ルパンの是非、幻の押井版)などは、特にオタクでなくとも普通に交わしている会話でしょう。
極力ディープな話題には触れずに、ちょっとおたくっぽく聞こえるけど一般人をスポイルしたりしない一線を守っている“食べやすい味付け”になっています。
本作は一風変わったダブル・ヒロイン制を採用。
ひとりはオタクの夢を具現化したような大野加奈子。
長身の帰国子女。少し鋤けよってくらい多くて長いストレートな黒髪。コスプレ大好き。プラモ大好き。ハゲひげマッチョ大好きなコスプレイヤー。勿論、腐女子。
後輩に「女オタクが嫌いです」と言われた際の切り替えし、
「ホモが嫌いな女子なんていません!!」
は歴史的名台詞(後に「ニャル子さんW」のツル子が好きな台詞として引用)。
もうひとりが、非オタクにしてアンチ・オタク、春日部咲。
高坂真琴の幼馴染でイケメンになった高坂に一目惚れ。しかし、邂逅した幼馴染は筋金入りのオタクに変貌しておりました。
何とか高坂からオタクの洗脳を解こうと七難八苦しますが全て徒労という、ある意味“悲劇のヒロイン”です。
「見えるのか?! あたしがこいつらと同じ人間に見えるのか?!」
いっそ、現視研なぞ潰れてしまえと念じていますが、生徒会から一方的なお取り潰し勧告があった時は率先して異議申し立てを行うなど、姉御肌な一面も。
この二人に男連中が引っ張られる形でお話は進んでいきます。
男部員で気になったのは、初代会長(姓名不明。写真2段目左)。
言葉少なく、存在感無く。しかし、サークルが窮地に立つと“関係者以外知りえない”はずの情報を提供して状況を打開。
どうやら、校内至る所に盗聴盗撮機器を設置している…らしい。
この事に気づいた咲が会長に詰め寄ると、
「もし、僕が本当にそんなことをしていたら、学校にいられなくなる男女が一杯いるはずだけど、そんなことになった人、ひとりもいないでしょ」
と、認めるより更に恐ろしい事を言い出す始末(この時、会長に脅さ…あいや、促されて咲も現視研に入会)。
部室にあった大昔の手作り機関誌の年号から、16年以上会長をやっている可能性も…。
彼の指名で二代目会長となる斑目晴信(写真2段目右)も、その痛さが他人とは思えず…。
ここに集う人間の交流、恋愛、就職、世代交代をじっくり見つめる(「げんしけん」「げんしけん2」「げんしけん二代目」)のもオツなものです。
「げんしけん」北米版DVD-BOXはテレビ放送12話にOVA3話、劇中アニメ「くじびきアンバランス」まで収録した4枚組で3,000円前後。
「あいつらが言ってたよ。オタクはなろうと思ってなるもんじゃない、気がついたらなっているものだって。だから辞めることもできないんだってさ」
さだめだな…。