久々に怖い、いや、ビビるホラーを堪能しました。
郊外に家を買ったファミリーが酷い目に遭う、という手垢のついた設定を、古典的手法で魅せる(新しい事など何もない)超オーソドックスなホラーでありながら、その語り口の巧さで観る者をグイグイ引き込んで行きます。
「死霊館」(2013年/ジェームズ・ワン監督)
絶対アルバトロスだろ、と思うようなやっつけタイトルに騙されてはいけません。
原題は「THE CONJURING」。英語だと“手品”“奇術”。スペイン語だと“目の前に呼び出すこと”。どちらの意味でとっても意味深なタイトルです。
1971年。ロードアイランドの郊外。念願のマイホームを購入したペロン一家(夫婦+娘5人)は裕福とは言えないまでも幸せ絶頂。しかし、その幸福の歯車は引っ越し初日から軋みをあげて狂っていきます。
昨今のホラーとは異なり流血沙汰はほとんど無し。ゴアもスプラッターもありません。
ドアが開く、閉まる、壁を叩く、ドアを叩く、時計が止まる、写真が落ちる、何かが居る…極めてオールドファッションな演出です。
そして音。ぶっちゃけコケ脅しです。しかし、これが効果抜群。計算されたタイミングで鳴るので“来るぞ、来るぞ…やっぱり来たぁ!(バクバク)”
となれば、この作品を味わい尽くす方法はただひとつ。ボリューム上げまくる事です。
ホームシアターな環境で爆音。心臓が止まっては動き、止まっては動き…(笑)
かくれんぼ(鬼が目隠しをして逃げたメンバーを探す。隠れた子は手を叩いて居場所のヒントを出す)の使い方なんか秀逸で、ここ絶対、劇場で悲鳴があがったんじゃないかと思います。
静かなシーンも音響設計が細やか。お母さんが地下室から出る時にかすかに笑い声が被るのですが、一瞬、家の前を歩いている人の声かと思った程の立体感。
その後、会話らしい声が(外から)聞こえてこないので、もしやと思って巻き戻してみたら、やはり同じ箇所で子供の笑い声が…
この一家と並行して描かれるもう一組の夫婦。エド&ロレイン・ウォーレン夫妻。
妻ロレインは霊能力者。夫エドは非聖職者ながらカトリック教会が唯一公認した悪魔研究家(アミティヴィル事件の調査にも関わった実在の超常現象研究家)。
ペロン夫妻の妻キャサリン(「ホーンティング」でヒドイ目に遭ったリリ・テイラー)の依頼を受けたウォーレン夫妻は家の実地調査を開始しますが…。
クライマックスはいささかサービス過剰。しかし、変に“実話だから”という湿っぽさを前面に押し出されるよりは、これくらい華々しい方が鑑賞後の気分はいいです。
最後をアミティヴィルに繋げるセリフで締めるのも(時間軸的にはちょっとおかしいですが)、いい感じ。
本作、本国でのヒットを受けて続編の製作が決定したようです。
主役は引き続きウォーレン夫妻(パトリック・ウィルソンとヴェラ・ファーミガ)。更に、本編冒頭で登場した呪われた人形「アナベル」を題材にしたスピン・オフも進行中とか。
新しいホラーの潮流になるのかもしれません。