ボール1個、テープ1本、車椅子1台。小道具ひとつで恐怖(ショックではない)はここまで表現できる。
ゴア無し、グロ無し、脅し無し。冷気漂う大人のホラー。
「チェンジリング」(1980年/ピーター・メダック監督)
黒字に赤文字というオープニングで個人的に掴みはOK(「エクソシスト3」唯一の不満点はクレジットが白だった事)。
事故で妻子を同時に失った作曲家ジョン・ラッセル(ジョージ・C・スコット)は、ニューヨークの自宅を引き払い、友人のつてでシアトルへ。
そこで歴史保存会の管理下にある築1世紀はあろうかと言う屋敷を借りるのですが…。
毎朝6時になると聞こえるドーン!ドーン!という何かを叩く音。
隠蔽された屋根裏部屋。捨てても戻ってくる娘の遺品。降霊会。その録音テープに残されたメッセージ。
既に「ヘルハウス」「家」「オーメン」公開後であり、これらの影響下にあるシーンも多々ありますが、全く“真似”を感じさせません。
むしろ、後世(特にJホラー)に与えた影響が大きく、“捨てても戻ってくる遺品”は「仄暗い水の底から」が、“井戸の中の死体”は「リング」が、“謎の音の原因”は「劇場版呪怨」がそれぞれパクっています。
前半、丁寧に積み重ねた怪奇現象を伏線に、後半は推理ミステリー。そして終盤はオカルト・ホラーと一粒で3度美味しい変則構成。
舞台となったビクトリア朝風のゴシックマンションは概観が20万ドル掛けて作ったお面みたいなもので、内部はセットなのですが、ここでのアングルのとり方が絶妙。
時に天井から、時に床から。“見上げたら誰かが見下ろしているかも”な不安感。