
『珠(たま)ちゃんは剣道強くなりたいって思ったこと、ある? あの人に勝ちたいって思ったこと、ある? 前に珠ちゃん、俺に聞いたよね。負けた時、どんな気持ちになるかって。きっと今、珠ちゃんが感じているような気持ちだよ。すっごく悔しいんだ』
『…負けるって、こういう事なんだ…』
天才肌に強いが故、負ける悔しさを知らなかった少女。

『ダン君やあんたにこの気持ちが分かってたまるか。自分と同じように相手が頑張ってたら差なんて縮まらない。勝てっこないのよ。努力しても無駄なら剣道なんてやってる意味ないわ』
『そんなの勝手に決めないでよ。努力が無駄なんて何で言えるの? 何で決められるの? あたしはそんな事思ったこと無いよ。たった2回負けただけで諦めてふてくされて逃げようとしているあんたなんかにそんな事言わせない!』
努力を重ねても重ねても勝つ悦びを得る事ができない少女。
日常系? いえいえ。熱い青春ドラマです。
「バンブーブレード[北米版DVD-BOX]」(全26話。2007年10月-2008年3月放送/斉藤久監督)
室江高校剣道部。顧問・石田虎侍(いしだとらじ)はちゃらんぽらんな非常勤講師。実質部員は2年女子、千葉紀梨乃(ちばきりの)ただひとり。
とある不純な理由で高校時代の先輩が指導している女子剣道部との練習試合をする事になった虎侍は部員集めに奔走しますが…。
紆余曲折の末、集まった個性豊かな面々。
天賦の才に恵まれた(しかし人付き合いには不慣れな)剣道の達人、川添珠姫(かわぞえたまき。愛称はタマちゃん)。
ボーイフレンドのダン君に誘われる形で入部した宮崎 都(みやざきみやこ。愛称はミヤミヤ)。外見はブリブリのお嬢様ですが、本性は…。

この“黒ミヤミヤ”が良いアクセントになっています。太刀筋の良さを認められながら勝ち星に恵まれなかったミヤミヤが初めて「勝ちたい」と思った相手とは。
『勝つって…こういう事なんだ…。このために皆頑張ってたんだ…』
一方、タマちゃんは負けた事で初めて“挑戦する悦び”を。
『おかあさん、私、剣道が好きになりました』
要所要所でお話を締めているのが部長の紀梨乃。珠姫のような天才肌ではありませんが、剣道が大好き。常に周りを気遣うムードメーカー。本作のイメージを決定づけているのが彼女の存在だと思います。

練習試合前の合同合宿で紀梨乃が披露した“竹刀組み立て勝負”(アクション映画の定番、分解拳銃組み立て勝負の竹刀版)はツボでした。
北米版DVD-BOXは全26話をDVD4枚に収録して3,000円弱。リージョンナンバー1.2.4なので、国内のデッキで普通に観る事ができます。