
“誰かが勝手に列車を暴走させて乗客大迷惑”
という1行でほぼ言い尽くせる英国製低予算パニック映画。
「パニック・トレイン」(2013年/オミッド・ノーシン監督)
深夜列車。最初のうちはそこそこ乗客がいますが、そのまま乗せておくと人物描写が面倒になるので、適当に下車。最終的に登場人物を6名まで絞り込み。

医者でシングルファーザーのルイスとその息子。最近恋人と別れたばかりの美人サラ。失敬な若者、ジャン。息子とうまくいっていない偏屈爺さんピーター、そして心臓の弱い老婦人エレーン。

この乗客のやりとりを丹念に見せ、「ええっと、これ何の映画だっけ? 恋する時刻表?」とか思い始めた頃、ようやっと異変勃発。
非常停止の際、線路脇に怪我人らしき人影発見。車掌行方不明。そして…、
列車が停まらない。
医者親子が降りる駅をノンストップで通過。最初は何を騒いでいるんだ、な体で高圧的態度をとっていた偏屈爺さんも自分が降りる駅素通りされた瞬間大激怒。
片っ端から手動非常ブレーキ引き倒すも手応え無し。
偏屈爺さんが速攻携帯で警察へ連絡しましたが…。
視点は乗客1本。犯人の顔も目的も不明。所謂「パニック・イン・スタジアム」タイプです。
とは言え、「パニック・イン~」にも一応、犯人目線の準備シーンはありました。本作は車掌が襲われる(犯人は手しか見えない)カットが一瞬入るのみ。
警察は電話の声すら無し(偏屈爺さん一人芝居)。一応、列車(ディーゼルなので送電停止しても動く)を停めるためにあれこれ画策しているようなのですが、そういう段取り描写一切無し。
ルイスが運転室手前まで入り込み、運転者とインターホンで会話した時に「乗客は全部で何人だ?」としつこく聞かれますが、この質問の意味は最後まで分からず(伏線回収する気無し)。
列車は訳も分からず暴走し、警察は何しているのか分からないまま、自助努力を強いられる乗客。
よく言えば“シチュエーション・スリラー”ですが、できればもうちっと多面的に構成してくれた方が盛り上がったのではないかと…。
失敬な若者も偏屈な爺さんも結構いい奴なので、いらんストレスを味わわずに済んだのは助かりましたが。