“(自分だけが)見えてしまう”というのは何かと厄介です。
他の人には見えないという事がサスペンスを生む事もありますが、大抵は誤解と偏見が無駄に主人公を追い詰めるというストレスの源になってしまいます。
その点、本作は最初の設定からこの問題をクリア(本来なら最初に疑惑の目を向ける警察署長が主人公の後ろ盾になっている)。
安心して本題である大災厄に没頭することができます。
「オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主」
(2013年/スティーブン・ソマーズ監督)
ディーン・R・クーンツの人気シリーズ第1作「オッド・トーマスの霊感」の映画化。
オッド・トーマスは20歳。見た目は冴えない。とても冴えない(ちょっとキック・アスとイメージが被る)。
特技は死者の霊が見えること。今日もつい先日惨殺された女友達がやってきて犯人を教えてくれた。
大立ち回りの末、犯人をぶっとばして警察へ。締めは困惑顔の警察署長(ウィレム・デフォー!)と証言の段取り確認(被害者が教えてくれた、とは言えない)。
ある日、いつものようにバイト先のダイナーで恋人ストーミー(アディソン・ティムリン)にからかわれつつ調理に励んでいたら店内に嫌なものが…。
ボダッハ。一種の悪霊。ボダッハ自身は悪さをしない(ただし、こちら側から“見えている”事がバレたら殺される)。
奴らは嗅ぎつけて見物に来るだけ。悲惨な大災厄を。
女の子が惨殺された程度じゃ出てこない。もっと大きな何か…。見渡せば町中にボダッハが…。ヤバイ!ヤバイでえ! この街に半端無い災厄がやって来る(もしくはもたらそうとしている奴がいる)。
それはいつ、どこで、どのように…。
適度なミスリードを重ねて本質に迫っていく構成は演出がやや微妙だったりしますが、あからさまに足を引っ張るような立ち位置の人間がいないのでストレスはフリー(←これ凄く大事)。
ちょいとホロ苦なラストまで、「ちゃんとした映画を観ている」(←金も時間も役者も無いB級映画を何本か観た後だとこれだけで感心してしまう)という気にさせてくれます。
※クーンツ原作の映画って「デモン・シード」くらいしか知らないので、ファンタジーな雰囲気がちょっと意外でした。