この映画を撮った時、藤純子(現・富司純子)が24歳であった(1作目製作時22歳)という事実を絶望と共に受け入れましょう。
今、二十歳そこそこでこの凛々しさを、荘厳なまでの逞しさを出せる女優が日本にいるのでしょうか?
「緋牡丹博徒 お竜参上」(1970年/加藤泰監督)
役名を全面に出したサブタイから“2作目辺り”を思わせますが、実はシリーズ6作目。
舞台は浅草。芝居の興行権を巡って対立する鉄砲久一家と鮫洲一家の抗争にお竜さんが巻き込まれ…ってなストーリーはこの際どうでも良くて…。
侠客ものに於ける様式美、こいつを堪能いたしましょう。
監督は仰角大好き加藤泰。ローアングルが確保できない時は地面を掘ったとまで言われるこだわりの人。
劇場では観客は目線より高い位置にあるスクリーンを“見上げて”いるわけですから,ある意味、自然な画角と言えるかもしれません。
もうひとつ、加藤監督の画作りの特徴は“奥行き”。
手前、中間、奥と3段構えの時もある、立体構成の素晴らしさ。障子の窓から覗く人物といった構図は一服の画。
文太の殺陣を見る機会ってあまりなかったのですが、所謂“振り付け”とは違う“重い刀でぶった斬る”感じが良く出ていました。
そして、藤純子。
合気道のような投げ技、匕首、銃。切り結びながらの銃撃。鮫洲組代貸との1発勝負はマカロニを思わせる迫力と緊張感。
激しい動の中に一瞬の静を挟む間合いの巧さ。乱れ髪の艶っぽさ。
とここまで書いてなんですが、実は一番印象に残ったのは、仕組まれた手打ち式に前振り無しで乱入し、エアプレンスピンをぶちかました挙句、鮫洲組組長(安部徹)の指を拳銃で吹き飛ばす“シルクハットの大親分”熊坂虎吉(若山富三郎)でした(笑)。
雰囲気も繋がりも一切無視して熊虎ワールドにしてしまう若山の力業に唖然茫然。
彼のキャラはかなりの衝撃だったようで、本作と同年に「シルクハットの大親分」「シルクハットの大親分 ちょび髭の熊」というスピンオフが生まれています。