「親分さんに不本意なお願いがあって参りました。渡世上、親分さんに恨みつらみは一切ございませんが、のっぴきならない義理で命を頂きに参りました」
「筋の通った挨拶をしているお人の前で不躾な真似はやめな。俺も西之丸だ。黙って斬られる訳にはいかねえ。勝負は運否天賦だ。どっちが倒れてもこの場限りにしようぜ」
そう。どんな時もまず挨拶。それが命のやりとりであったとしても正しい挨拶から入れば清廉な儀式に。
所は名古屋。西之丸一家の玄関先で一言一言噛んで含めるような仁義を切るお竜さん。それをきっちり終りまで聞いて仁義を返す西之丸一家の若造。
挨拶の様式美ですね。
西之丸一家六代目親分・杉山貞次郎を演じる嵐寛寿郎が渋い。
「金原の、俺たちは無職(ぶしょく。渡世人の事。むしょくではない)だぜ。無職は無職らしく、その武運を守ってこそ、お天道様も目をつぶってくださるってもんだ」
健さんを見てしまうと、文太じゃちょっと軽いかな、という気になりますね。
この話の後日談が第6作目(加藤監督2作目)の「緋牡丹博徒 お竜参上」になります。